研究課題
昨年度までの成果をもとに更に研究を進め、次のような成果があった。まず、同一試料で測定したBi2Sr2CaCu2Ozのラマン散乱スペクトルと角度分解光電子分光(ARPES)スペクトルについて、両者の定量的な比較を行うことに成功した。ARPESの実験データから久保公式を用いて、ほぼ完ぺきにラマンスペクトルを再現できることがわかった。このことから、これまで謎であったB2g偏光のラマンスペクトルで見られる超伝導ギャップの組成依存性が、d波ギャップの大きさの変化に依るのではなく、超伝導に寄与するフェルミ面領域が減少しているためであることがわかった。d波超伝導ギャップはARPESでの測定結果の通り、組成依存していないことが結論づけられた。また、B1g偏光のギャップエネルギーは、ARPESデータからは再現できず、この運動量空間領域のギャップが擬ギャップの影響を強く受けていること、その影響の程度は測定プローブごとに異なること、も明らかとなった。もう一つの成果は、昨年度までに発見した“光学スペクトルに現れる高温での超伝導前駆現象”が普遍的なものであるかどうかの確認である。c軸偏光スぺクトルにおいて観測された超伝導前駆現象が、ab面内方向でも観測できるかどうか、同じYBa2Cu3Oy結晶を用いて測定を試みた。その結果、面内偏光では前駆現象が非常に見えにくいことがわかった。これは、常伝導状態ですでに反射率が高いため、超伝導転移による反射率の増加が観測しにくいことによるものと思われる。反射型テラヘルツ時間領域分光を用いて、種々の組成の(La,Sr)2CuO4について超伝導前駆現象の探索も行った。どの組成についても、超伝導転移温度より10K程度高温から超伝導揺らぎが観測されたが、Y系で見られたような非常に高温からの前駆現象は観測できなかった。これも測定手法の精度の問題によるものと考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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