研究課題/領域番号 |
24340084
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
花咲 徳亮 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70292761)
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研究分担者 |
野上 由夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10202251)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フタロシアニン / 巨大磁気抵抗 / 電荷秩序 / 共鳴X線散乱 / ラマン散乱 |
研究実績の概要 |
フタロシアニン分子性伝導体では巨大磁気抵抗効果が観測される。この機構を解明する上で、電子相関により電荷秩序を起こし分子の価数が不均一になるのを明らかにする事が重要である。これを確かめるため共鳴X線回折による検出を試みてきた。鉄の吸収端の直上で分子電荷の違いによるスペクトルの差異を見い出した。しかし、測定信号が弱いため明確な結論を得るに至っていない。この実験と同時平行で、分子電荷を検出する他の方法も探っている。電子は分子内の化学結合にも寄与するため、分子電荷(最高占有分子軌道に存在する電子数)によって結合の強さも変化する。そこで、分子価数が既知であるフタロシアン分子の標準物質において分子内振動をラマン散乱の測定で調べた。その結果、波数1530cm-1付近のモードが分子電荷の差異に対して変化する事を見いだした。このモードは、分子のピロールリング部が主に振動するモードであるが、最高占有分子軌道はピロールリング部分に存在しており、理論的にも妥当である。次年度は、巨大磁気抵抗効果を示すフタロシアニン分子性伝導体でこのモードの温度依存性を精査し、電荷秩序を微視的に解明する予定である。また、機構解明をする上で、伝導電子(π電子)と局在スピン(d電子)の分子内相互作用の知見も必要不可欠である。そこで、フタロシアニン分子を有機溶媒に溶かしハロゲンを加えて分子を酸化して、π電子とd電子スピンが存在する状態で溶液の磁化を測定した。その結果、ハロゲン添加量に比例して磁化が単調に増加し飽和していく事が分かった。この磁化の傾向とCurie定数の値から、π電子とd電子の間に強力な強磁性的相互作用(分子的フント結合)がある事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
機構解明の鍵となる、電荷秩序に敏感であると考えられる分子内振動モードを見いだす事ができ、研究の更なる進展が見込めるため。
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今後の研究の推進方策 |
新たに見いだした分子内振動モードをプローブとして用いて、機構解明の鍵となる電荷秩序の検出をラマン散乱の測定を通じて、次年度も引き続き進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
共鳴X線散乱に関する詳細な解析を行ったが、結論を得るにはデータの精度がまだ十分ではない。そこで、計画を変更して、相補的な情報が得られると期待できるラマン散乱の測定を同時平行で行う事としたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、相補的な情報が期待できるラマン散乱の測定を次年度に行う事とし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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