研究課題
強磁性体超伝導体URhGeは磁場誘起超伝導を示す特異な物質である。73Ge同位体を用いた試料に対する73Ge-NMR(核磁気共鳴)測定から磁気揺らぎの性質を調べた。その結果、ゼロ磁場近傍では類似物質のUCoGeに比べて結晶のc軸方向の一軸的な磁気揺らぎはそれほど強くない事、磁場誘起超伝導相の近傍ではb軸方向とc軸方向の磁気揺らぎが発達していることを明らかにした。同時に磁場誘起超伝導相近傍において起こるスピン再配列は低温において一次相転移であり、温度-磁場相図上に2次相転移が1次相点に切り替わる三重臨界点が存在することを明らかにした。よって、URhGeの磁場誘起超伝導は強磁性の三重臨界点近傍の磁気揺らぎによって出現していることを導いた。また、他の強磁性超伝導体UGe2の73Ge-NMRも行い、常圧において異方的な磁気揺らぎの発達を観測した。また、ヘリカル磁性体CrAsにおいて圧力誘起超伝導を発見した。CrAsは古くから知られるヘリカル磁性体であり、結晶構造はURhGeを同じ空間群に属する。約265Kの磁気転移温度は0.7GPaの加圧によって抑制され、最高2.2 Kの超伝導が出現する。これは磁気的なCr系物質として初めての超伝導である。電気抵抗測定において非フェルミ液体的振る舞いが観測される事、超伝導転移温度が試料の純良性に依存することから超伝導機構が電子-格子相互作用では説明できない非従来型超伝導の可能性が示唆された。その後、75As-NQR(核四重極共鳴)測定を行い、磁気相転移は圧力下でも1次相転移であり、温度-圧力相図上に量子臨界点は存在しない事、圧力下の常磁性領域において磁気揺らぎが観測される事、核磁気緩和率に従来型超伝導に特徴的なコヒーレンスピークが現れないことを明らかにした。以上の結果から、CrAsはCr系物質として初の非従来型超伝導体であることが強く示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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