研究課題/領域番号 |
24340086
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
横谷 尚睦 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90311646)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 芳香族炭化水素 / 超伝導 / 電子構造 / 光電子分光 / 薄膜 |
研究概要 |
本課題では、金属ドープ芳香族炭化水素超伝導体の超伝導機構解明を目指して、伝導性および超伝導性を支配する相互作用を実験的に明らかにする為に、金属ドープ芳香族炭化水素超伝導体とそれらの関連物質について、光電子分光および逆光電子分光により電子構造を実験的に明らかにすることを目的として研究を行っている。 本年度は、HOPG基板上に真空蒸着により成長させたポタシウム(K)ドープピセン膜にたいする光電子分光測定から観測された金属端について、その再現性等を調べる目的で幾つかの光電子分光実験を行った。膜試料の作成条件を同じくした実験からは、これまでの結果と同様に金属端の出現-消失が観測されることを確認した。 真空蒸着膜自体の物性を調べるために、建設した薄膜作製・評価装置を用いて、ピセン薄膜試料に対して室温で電気抵抗のK蒸着量依存性測定を行った。Kドープによりピセン薄膜試料の電気抵抗が変化することを確認した。このことは、ピセン膜上に真空蒸着されたKがピセン膜に拡散することを示唆する。電気抵抗のK蒸着量依存性の結果において特徴的な変化を示すK蒸着量領域において電気抵抗の温度変化を測定した。その結果、低温領域で金属的な抵抗の温度変化を観測した。 薄膜に対する実験から結晶構造および配向が用いる基板ごとに異なる可能性が高いことがわかって来た。Kドープピセン膜の結晶構造および配向の基板依存性を調べる第一歩として、SiO2、マイカ、HOPG上に成長させた純粋ピセン膜のすれすれ入射X線回折実験を行った。HOPG上の純粋ピセン膜においては、SiO2およびマイカでは観測されないプロフファイルが観測された。この結果は、HOPG上の純粋ピセン膜において、SiO2およびマイカ上の純粋ピセン膜とは異なる配向の部分が存在することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標の一つとしている超伝導ギャップについては観測できていないものの、価電子帯全体の電子構造のKドープ量依存性、フェルミ準位近傍の電子構造およびそのKドープ量依存性について観測に成功している。一方、芳香族炭化水素の真空蒸着薄膜に対してその場で電気抵抗測定できる薄膜作製・評価装置により、薄膜の電気抵抗率の蒸着量依存性を観測することができた。電気抵抗の温度変化の測定から金属的な温度依存性を観測し、加えて低温において超伝導に特徴的な電圧-電流特性を見いだしている。これらの理由により、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
薄膜試料を用いた電子構造研究を、薄膜の物性評価も含め、推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末の出張予算が、他機関からの支援により、当初予定額よりも低く抑えられたため。 消耗品購入に充てる予定である。
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