研究課題
本研究では、鉄系超伝導体の低温高圧下での結晶構造を精密に測定することにより、結晶構造とTcの関係を明らかにし、超伝導のメカニズム解明に資する基礎データを得ることを目的としている。低温高圧下での結晶構造測定は高エネルギー加速器研究機構の放射光科学研究施設(PF)の高圧X線ビームライン(BL-18C)を利用した。BL-18Cには冷凍能力が十分に大きく、振動の影響を最小限とする高性能の冷凍機を平成25年度に本科研費により導入している。平成26年度は、主に次の点を明らかにした。(1)ReFeAsO1-xHx (Re = La,Sm)の圧力効果: 酸素サイトの水素置換は、オーバードープ側の約50% (x=0.5)まで合成可能であることが特徴である。LaFeAsO1-xHxのTcはxの変化に対し、低ドープ側と高ドープ側に2つのTcのピークがあり、超伝導の発現機構に差異があることが理論的に指摘されている。Tcの圧力効果測定から、ちょうどピークの中間の谷間に相当するx = 0.18でTcは圧力下で52Kまで上昇することがわかった。Laをベースとする鉄系超伝導体では50Kを超える超伝導は初めてである。本研究では圧力下の結晶構造についても調べ、超伝導の発現条件について実験的に明らかにした。50Kを超えるTcはSmFeAsO1-xHxと同じであり、これらの一連の高圧実験から、LaFeAsO1-xHxとSmFeAsO1-xHxの超伝導についてのTcと結晶構造の関連性を明らかにし、論文として出版した。(2)スピンラダー鉄族化合物BaFe2S3の圧力効果:鉄原子がはしごのように1次元的に配列したスピンラダー鉄族化合物は低温で磁気秩序を示す物質で、絶縁体である。圧力を加えて電気抵抗を測定したところ、この物質が12GPaで絶縁体―金属転移を示し、15Kで超伝導を示すことがわかった。この転移について詳しく調べるために、高圧下での結晶構造決定を行い、格子定数の圧力効果を求めた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (26件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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