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2012 年度 実績報告書

鉄系超伝導体における超伝導ギャップの位相構造の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24340089
研究種目

基盤研究(B)

研究機関独立行政法人理化学研究所

研究代表者

花栗 哲郎  独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (40251326)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード鉄系超伝導体 / STM/STS / 超伝導ギャップ / 準粒子干渉効果
研究概要

鉄系超伝導体では、その高い超伝導転移温度をもたらす機構として、非連結Fermi面間のネスティングに起因するスピン揺らぎ機構が提唱されている。この機構によると、波数空間のΓ点近傍のホールFermi面と、M点近傍の電子Fermi面で、超伝導ギャップの位相が反転する、いわゆるs±波超伝導が実現する。このことを確かめるためには、ホール面と電子面に開く超伝導ギャップ間の位相差を実験的に検出する必要がある。STM/STSを用いて観測されるBogoliubov準粒子の干渉効果の磁場依存性により、位相構造の決定が可能であるが、これまでこのような実験が行われた例は、Fe(Se,Te)に限られている。Fe(Se,Te)ではs±波超伝導を示唆する結果が得られているが、この系はTeドーピングによる欠陥を含む乱れた系であるので、よりクリーンな系での実験が望まれている。本研究では、京大、カールスルーエ工科大グループからTeを含まない高純度FeSe単結晶試料の提供を受け、Bogoliubov準粒子干渉効果の磁場依存性の測定を行った。
超伝導状態でのトンネルスペクトルは清華大グループの先行研究同様V字型をしており、超伝導ギャップにノードが存在することが示唆された。超伝導ギャップ以下のエネルギーでの準粒子干渉パターンをFourier解析したところ、Fe(Se,Te)の場合と同様、電子面間の散乱とホール面電子面間の散乱に相当する波数を持つ二つの信号が観測された。それぞれの信号強度は、磁場を印加すると前者は増加し、後者は減少した。この振る舞いはs±波で期待されるものであり、ノードが存在しても、全体としてホール面と電子面間の超伝導ギャップの位相は反転していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度納品が遅れていた超伝導マグネットが納品され、実験が順調に推移し始めた。。

今後の研究の推進方策

FeSeの電子状態が当初期待しよりもはるかに多彩な側面を持つことが明らかになりつつあるので、当面、FeSeの研究に注力する。準粒子干渉効果の磁場依存性、超伝導ギャップに与える双晶の影響、渦糸の電子状態等を明らかにすることを目標にする。

次年度の研究費の使用計画

納品予定であった超伝導マグネットシステムが、業者の都合で平成24年度に納品されなかったため、補助金の繰り越しを行った。
超伝導マグネットシステムはすでに納品され、問題なく稼働しているので、本装置に予定していた予算額はすでに使用済みである。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Evidence for a cos(4φ) Modulation of the Superconducting Energy Gap of Optimally Doped FeTe0.6Se0.4 Single Crystals Using Laser Angle-Resolved Photoemission Spectroscopy2012

    • 著者名/発表者名
      K. Okazaki, Y. Ito, Y. Ota, Y. Kotani, T. Shimojima, T. Kiss, S. Watanabe, C. -T. Chen, S. Niitaka, T. Hanaguri, H. Takagi, A. Chainani and S. Shin
    • 雑誌名

      Phys. Rev. Lett.

      巻: 109 ページ: 237011

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.109.237011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Scanning tunneling microscopy/spectroscopy of vortices in LiFeAs2012

    • 著者名/発表者名
      T. Hanaguri, K. Kitagawa, K. Matsubayashi, Y. Mazaki, Y. Uwatoko and H. Takagi
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 85 ページ: 214505

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.85.214505

    • 査読あり
  • [学会発表] Experimental trends in cuprates and pnictides: STM2012

    • 著者名/発表者名
      T. Hanaguri
    • 学会等名
      International Conference on Materials and Mechanisms of Superconductivity (M2S 2012)
    • 発表場所
      Washington DC, USA
    • 年月日
      20120729-20120803
    • 招待講演
  • [学会発表] STM/STSでみたLiFeAsの磁束状態2012

    • 著者名/発表者名
      花栗哲郎
    • 学会等名
      基研研究会「鉄系高温超伝導の物理~スピン・軌道・格子~」
    • 発表場所
      京都大学(京都市)
    • 年月日
      20120621-20120622
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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