研究概要 |
本年度は中性子非弾性散乱実験に用いるBa_<1-x>K_xFe_2As_2単結晶のうち組成がx=0.5,0,66,1.0のものを作製することに成功した。各組成単結晶を50~200枚程度をアセンブルし、実験に用いた。またBaFe_2(As,P)_2単結晶の作製にも成功し、中性子非弾性散乱実験を実施した。 Ba_<1-x>K_xFe_2As_2のスピン揺動の測定では、x=0.5,0,66の超伝導相において明瞭なレゾナンスピークを観測した。また、磁気散乱ピークはインコメンシュレートであり、K濃度が増加するに従い、インコメンシュラビリティーが増大することを確認した。超伝導の対称性がx~0.7近傍で変わることが示唆されており、今後オーバードープの測定を進め、インコメンシュラビリティーと超伝導転移温度の相関関係を明らかにしていきたい。また、J-PARCでの実験により、KFe2As2のスピン波をE=60meV付近まで明らかにした。これにより、鉄系超伝導体における典型的な遍歴磁性のスピン波が明らかとなった。 BaFe_2(As,P)_2では、オプティマムドープのスピン揺動を明らかにした。超伝導相でレゾナンスピークを観測し、レゾナンスエネルギーが鉄ヒ素面間方向で分散を持つことを明らかにした。これは母物質の3次元反強磁性相関の揺らぎによるものであることが、他の鉄系超伝導体のレゾナンスピークとの比較から明らかとなった。本結果はレゾナンスピークがスピンエキシトンによるものとするモデルと矛盾しておらず、磁性と超伝導が強く相関していることを示唆するものである。
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