研究課題
本年度は中性子非弾性散乱実験に用いるBa1-xKxFe2As2単結晶のうち組成がx=0.58,0.77,0.85のものを作製することに成功した。各組成単結晶をアセンブルし、実験に用いた。Ba1-xKxFe2As2のスピン揺動の測定では、x=0.58,0.77の超伝導相において明瞭なレゾナンスピークを観測した。昨年度の結果と合わせてレゾナンスピークエネルギーと強度の組成依存性が明らかとなった。その結果、レゾナンスピークの振る舞いが0.7近傍で激変することが分かった。ARPESなどの測定では超伝導のギャップ構造がx~0.7近傍で変わることが示唆されており、これと今回観測されたレゾナンスピークの振る舞いが関連しているように見える。偏極中性子非弾性散乱実験ではx=0.50のレゾナンスピークにスピン空間異方性が若干あることを明らかにした。Co最適ドープの試料よりも異方性は小さい。これは今回のK-50%ドープの試料が反強磁性相から離れているためであると思われる。このように反強磁性相とスピン空間異方性の関連が示唆される結果が得られた。また、J-PARCでのパルス中性子散乱実験では、Ba1-xKxFe2As2(x=0.5)のスピン励起をゾーンセンターからゾーンバウンダリーに渡って測定した。その結果、スピン励起の分散関係が明らかとなった。磁気励起ピークはE=300meV付近まで確認できた。Tcの低いKFe2As2と比べてエネルギースケールが大きく、磁性と超伝導の相関関係を示唆する結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
予定していた中性子非弾性散乱実験用の単結晶作製に成功し、磁気非弾性散乱ピークの系統的な測定に成功した。依然として、国内の研究用原子炉(JRR-3)は再稼働できていないが、国外の研究機関にて実験することにより、滞りなく研究を進めることができた。
今後も当面、研究用原子炉(JRR-3)が再稼働しない可能性がある。その場合でも研究が推進できるよう、海外の研究機関にて中性子非弾性散乱実験を行う用意を進める。
H25年度に実施予定であった海外での中性子非弾性散乱実験などがH26年度にずれ込んだため、直接経費次年度使用の助成金が発生した。H26年度は主に海外での中性子非弾性散乱実験及び試料作製などに研究費を使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 5件)
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