平成26年度(最終年度)はマイクロトラップ中の単一原子の操作と空間位相変調器を用いたマイクロ光トラップアレーの研究を中心に研究を行った。マイクロトラップ中の単一原子の操作の研究に関しては、短時間に高効率に単一のRb原子のみをマイクロトラップに捕捉するため、青色離調光による光誘紀衝突を用いたトラップ中の原子制御の研究を行った。通常の赤色離調光を用いた方法では1個の原子を得る効率は50%が最大であるが、これを青色離調光を用いることによりこれを63%まで向上することができた。今後さらに最適化を行って単一原子トラップ効率を向上することにより、2~10個のマイクロトラップに原子1個のみを捕捉する効率を大きく向上できる見通しが立った。 一方、マイクロ光トラップアレーの実現に向けて研究は当初の計画より少々遅れていたが、空間位相変調器を用いて任意の空間パターンの光トラップを実現する光学系の開発を行った。波長850nmのレーザー光を2次元空間位相変調器を用いて任意の位相変調を行い、これを高NAレンズで集光することにより大きさ2ミクロン、間隔5ミクロンの2~20個の複数のマイクロトラップを実現することができた。また任意の空間パターンのトラップを作成するプログラムを開発し、1次元から2次元の任意の個数の周期ポテンシャルを作成することが可能になった。今後は現在ある単一原子操作の実験系にこの空間位相変調器の光学系を組み込んでマイクロトラップアレーを実現して実際に冷却Rb原子をトラップする予定である。先の青色離調光による光誘紀衝突を用いたトラップ内の原子数制御法と組み合わせることにより高い効率で1次元または2次元の光格子を実現できる見通しが立ち、今後このような系とリドベルグブロッケード効果を用いることにより多数の原子間の量子もつれ状態の実現や量子シミュレーションなどの研究が可能になると期待される。
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