研究課題/領域番号 |
24340097
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大村 英樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (60356665)
|
研究分担者 |
齋藤 直昭 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 副研究部門長 (90357070)
森下 亨 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (20313405)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 原子・分子 / 量子制御 / コヒーレント制御 / 位相制御レーザーパルス |
研究概要 |
本研究課題の目的は、申請者がこれまでに培ってきた2色の位相制御レーザーパルスによる気体分子の異方性トンネルイオン化の量子制御技術を多色の位相制御レーザーに発展させ、従来技術では困難であった課題に対して原子分子制御の質的転換を目指した新しい方法論を提示することである。具体的には以下のとおりである。1.多色位相制御レーザーパルスにおいて各周波数成分の相対位相の計測と制御が可能な、レーザー場フーリエ合成装置の作製。2.フーリエ合成された多色位相制御レーザーパルスによって駆動された光電子の運動を追跡するイオン-光電子同時検出装置の高性能化。3.強いレーザー場による分子トンネルイオン化の精密な理論の構築と実験との詳細な比較検討。 平成25年度の成果は以下の通りである。 1.現有設備であるナノ秒QスイッチYAGレーザーの高調波の相対位相を制御する多色位相制御レーザーパルス発生装置を作製した。4色位相制御レーザーパルスを3原子分子(OCS)に照射する実験を行い、位相に強く依存する配向選択分子イオン化の観測に成功した。関連する結果を論文発表した。 2.昨年度に作製した電解イオン顕微鏡を基本構造とした原子分子溜め込み型真空チェンバーによるイオン-光電子追跡装置に対してその性能評価を行った。従来の数10Hzから1KHzの繰り返し周波数のレーザー照射による実験が可能となり、短時間でS/Nのよい2次元画像データを取得することが可能となった。一方で当初予定していた真空度が達成できないことも判明した。 3.「シーガート漸近理論」をもとに、弱電場漸近理論を開発し、その高次補正項、分子内の角運動量の効果、多電子系の理論を構築し、計算コード開発を行い得られた結果を学術論文および国際会議において発表した。また、関連する高強度レーザー場中の原子・分子ダイナミクスに関する理論的研究を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に成功した3色位相制御レーザーパルスによる実験から4色位相制御レーザーパルスによる実験に発展させ、単純な構造を持つ3原子分子(OCS)などの簡単な気相分子に照射して配向選択分子イオン化を観測する実験を行った。当初の予定通り4色のレーザー光の相対位相差に強く依存する実験結果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度成功した4色位相制御レーザーパルスを、単純な構造を持つ2原子分子(CO)や3原子分子(OCS)などの簡単な気相分子に照射して配向選択分子イオン化を観測する。配向分子選択イオン化の位相差依存性から各周波数成分の相対位相差の決定を行い、4色位相制御レーザーパルスのフーリエ合成を行う。得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度はほぼ計画通りに研究費が使用されたため、昨年度の原子分子溜め込み型イオンー光電子追跡装置への計画変更時に発生した繰越金がそのまま本年度に繰り越された形となった。 レーザー場フーリエ合成装置およびイオン-光電子追跡装置のさらなる高性能化に使用する予定である。また、2次元画像データ解析技術の高速度化にも使用予定である、
|