1.ガラス転移の高次特異点における動的不均一性とその臨界的ダイナミクス ガラス転移のダイナミクスを記述する標準理論であるモード結合理論は、最近、申請者らにより転移点における動的不均一性を記述できるように拡張された。一方、不純物や強い引力が存在する場合におけるガラス転移においては、モード結合理論が予想されるダイナミクスに、不連続‐連続転移やそれに伴うこうじ特異点が存在することが知られている。われわれは、高次特異点における動的不均一性を、モード結合理論の枠組みで解析し、全く新しい複数の臨界指数を計算した。また、その普遍性クラスについて議論をした。 2.ベーテ格子上の運動論的拘束された模型のガラス転移における不純物の影響 現実的な液体系でガラス転移点を観測することは、観測時間の発散のために実験的にも数値的にも不可能であった。しかし、最近液体の構成粒子の一部をランダムに凍結させる(ピンさせる)ことにより、熱平衡状態を保ったままガラス転移点を数値実験により観測するアイデアが提案された。これはガラス転移が熱力学転移であることを示すための格好のベンチモデルとなりうる。そこで、われわれは熱力学的転移を持たない模型である、運動論的に拘束されたスピンモデルについて、ランダムピニングの影響を詳細に検討した。この系はベーテ格子上では、平均場的な動的転移を起こすことが知られている。この転移点が不純物の影響を受ける様子を調べた結果、熱力学模型における動的転移点と類似の、転移点および高次の特異点が存在することが示された。動的相関長もモード結合理論の予想と一致することがわかった。
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