平成24年~25年度の研究結果から,新燃岳2011年噴火の2回目の準プリニー式噴火の成長要因が,噴出するマグマに内在すること,そして,それが後続する発泡度の高いマグマによるものであるという仮説がたてられた.平成26年度は,この仮説を確認するための噴出物解析と,その噴火過程を模擬する室内実験を行った.噴出物の組織解析では,前年度までに得られていたマグマの発泡度(みかけ密度)に加えて、結晶度の定量化と,結晶数密度の変化の傾向を調べた.その結果,1回目から2回目の準プリニー式噴火の噴出物においては,浅部におけるマグマ滞留時間に大きな違いがないことが示唆された.それは,発泡度の高いマグマがその上の重いマグマを押し上げ,一緒に加速したという仮説に矛盾するものではない.室内実験では,水あめをマグマ模擬物質として使用し,マグマだまりと火道を模擬するシステムを組み立てた.化学反応によって水あめを発泡させ,火道を通って噴き出す様子とそれに伴う波動を計測した.この実験で,噴出の成長期に発泡度の低いマグマが出ること,噴出の成長に伴い,空振や地震の振幅が増加すること,爆発が激しくなる後期に発泡度の高いマグマが噴出すること,また、その時期には噴出率自体は低下すること、など,新燃岳の噴火過程に類似した現象を作り出すことができた.爆発的な連続噴火について,空振・地震の観測データと噴出物解析,室内実験を組み合わせた本研究により,これまでの定常火道流モデルに基づく描像では見落とされていた流れの時間変化と火道内マグマの空間的変化,噴出中の波動の持つ意味が大きく見直されることになった.
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