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2013 年度 実績報告書

高間隙水圧下での蛇紋岩のすべり特性とスロー地震の関連性

研究課題

研究課題/領域番号 24340105
研究機関広島大学

研究代表者

片山 郁夫  広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10448235)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードスロー地震 / プレート境界 / 蛇紋岩 / 摩擦特性
研究概要

沈み込み帯で発生するスロー地震は通常の地震とは異なり,比較的小さな応力降下量と長い継続時間で特徴づけられる。間隙流体が存在すると有効応力が減少するため,前者の応力降下量はプレート境界での流体の存在に起因すると考えられるが,後者の継続時間の違いは流体の存在だけで説明することは難しい。本年度は,スロー地震特有の継続時間がプレート境界での物質の違いに原因があるとの仮説をたて,摩擦の強度回復と臨界すべり量に注目して室内実験を行なった。沈み込むプレートから脱水反応によって放出される水は,上盤側のマントルと反応して局所的に蛇紋岩などの含水層を形成していると予想される。そこで実験では,蛇紋石と無水鉱物である石英/かんらん石の摩擦特性の違いに注目したヒーリング実験を二軸摩擦試験機を用いて行なった。その結果,蛇紋岩は石英/かんらん石に比べると強度回復が弱く,またピーク摩擦から定常摩擦に至る遷移すべり距離が系統的に長い特徴をもつことが分かった。数値モデルではスロー地震は臨界すべり量が長い場合に起きやすいとの報告もあり,蛇紋石が比較的長い臨界すべり変位を持つことがスロー地震の一因になっていると考えられる。以上のことから,プレート境界での水の存在により変質(蛇紋岩化)した領域がスロー地震の発生域に対応するのに対し,変質せずに固着した領域はアスペリティとして働き通常の地震の震源域となっていると予想される。なお,スロー地震の発生深度が深さ30km付近に集中することから,そこでは蛇紋岩に加え高間隙水圧が発生しているのに対し,さらに深部では流体圧が低いため脆性的な変形ではなく塑性変形によって歪みが解放されていると考察した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験はおおむね順調に進んでいるが,観測との照合やシミュレーションによる検証は今後の課題である。

今後の研究の推進方策

研究はおおむね予定どおりに進展しているが,今後は蛇紋岩の摩擦特性が他の鉱物と異なる原因について,鉱物学的な側面から検証していきたい。また,最終的には,スロー地震のメカニズムについて物質科学的なモデルを提唱できるように考察を進めていきたい。

次年度の研究費の使用計画

想定していた物品費を下まわったため。
今年度の経費と合わせて,実験などの消耗品にあてる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Slow earthquakes associated with fault healing on a serpentinized plate interface2013

    • 著者名/発表者名
      Katayama, I., Iwata, M., Okazaki, K. and Hirauchi, K.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 3 ページ: 1784

    • DOI

      10.1038/srep01784

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rheological contrast between serpentine species and implications for slab–mantle wedge decoupling2013

    • 著者名/発表者名
      Hirauchi, K. and Katayama, I.
    • 雑誌名

      Tectonophysics

      巻: 608 ページ: 545-551

    • DOI

      10.1016/j.tecto.2013.08.027

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Shear-induced permeability anisotropy of simulated serpentine gouges produced by triaxial deformation experiments2013

    • 著者名/発表者名
      Okazaki, K., Katayama, I. and Noda, H.
    • 雑誌名

      Geophysical Research Letter

      巻: 40 ページ: 1-5

    • DOI

      10.1002/grl.50302

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of pore fluid pressure on the frictional strength of antigorite serpentinite2013

    • 著者名/発表者名
      Okazaki, K., Katayama, I. and Takahashi, M.
    • 雑誌名

      Tectonophysics

      巻: 583 ページ: 49-53

    • DOI

      10.1016/j.tecto.2012.10.017

    • 査読あり
  • [学会発表] Frictional healing of clay minerals and possible cause of non-asperity on the plate interface

    • 著者名/発表者名
      I. Katayama, T. Kubo,
    • 学会等名
      Geofluid 3, Nature and Dynamics of Fluids in Subduction Zones
    • 発表場所
      Tokyo, Japan
    • 招待講演
  • [学会発表] 沈み込みプレート境界での流体移動とスロー地震

    • 著者名/発表者名
      片山郁夫
    • 学会等名
      日本地質学会
    • 発表場所
      仙台
    • 招待講演
  • [学会発表] 蛇紋岩の摩擦ヒーリング特性とスロー地震の関連性

    • 著者名/発表者名
      片山郁夫,岩田睦美,岡崎啓史,平内健一
    • 学会等名
      地球惑星科学連合大会
    • 発表場所
      幕張
    • 招待講演
  • [備考] 地球内部物質循環グループの紹介

    • URL

      http://www.geol.sci.hiroshima-u.ac.jp/~envi/link/katayamaG.html

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公開日: 2015-05-28  

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