本研究では、東北沖、千島海溝や海外の沈み込み帯を対象にし、巨大地震の発生サイクルと津波生成のモデルを構築し、巨大地震の発生や津波危険度の評価に資する。本年度は1896年明治三陸地震の津波波源の詳細な検討と、ヒクランギ沈み込み帯における地震発生サイクルのモデル化を行い、津波を生成する地震のメカニズムの検討を行った。前年度に引き続き、1896年明治三陸地震の津波波源を検潮記録と津波痕跡高から推定し、2011年東北沖地震の津波波源モデルと比較・再検討を行った。1896年明治三陸地震の大すべり域(20 mの小断層2枚)での2011年東北沖地震のすべり量は3 mと14 mであった。一方、それより浅い部分でのすべり量は、1896年明治三陸地震は3 m、2011年東北沖地震は20 mと36 mであったことから、1896年と2011年のすべりは相補的であったといえる。2011年東北地方太平洋沖地震は、1896年明治三陸地震よりもさらに浅部の小断層で大きなすべりが発生していたことになる。また、ニュージーランド北島ヒクランギ沈み込み帯では1947年に津波地震が発生している。津波地震が発生した領域は、海山周辺で強く固着していると考えられている。また、この地域の周辺では浅部スロースリップも発生している。そこで、スロースリップと海山により強く固着しているアスペリティを考慮したすべり過程のモデル化を行った。強く固着している領域で破壊が生じると地震時すべりはスロースリップ領域まで伝播する。これにより、津波地震が発生すると考えられる。
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