研究課題/領域番号 |
24340109
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
日比谷 紀之 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (80192714)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乱流混合 / パラメタリゼーション / 深層海洋大循環 / 内部波 / 非線形相互干渉 / 潮汐流 / 海底地形 / 超深海 |
研究実績の概要 |
平成25年6月に行った鹿児島大学水産学部の練習船「かごしま丸」による沖縄トラフ南部海域の観測航海、および、平成25年10月に行った東京海洋大学海洋学部の練習船「神鷹丸」による伊豆小笠原海域の観測航海の潮時(大潮、中潮、小潮)にあわせて3次元高精度の内部波モデルを駆動し、各海域における海底地形の凹凸から発する内部波と深海に存在するギャレット・ムンクの平衡内部波との非線形相互干渉をシミュレートすることで、海底地形上に形成される乱流混合域の分布を調べた。 この計算結果を、電磁流速計 GEMCを取り付けたVMP-5500 による観測で得られた海底直上までの乱流強度の鉛直分布などと比較し、深海における乱流混合を、海底地形の卓越水平波数、海底地形の高さ、海底地形上を越える潮流の強さにおける成層の強さなど、諸々の物理量と関連づけることによって、パラメタリゼーションの式を完成させた。 この定式化によれば、超深海の海底地形上での内部波の応答が2つの無次元パラメータ Te=U/ωl、N*=N/ω [U:海底地形上を越える潮流の振幅、l:海底地形の水平スケール、N:海底近傍での浮力周波数、ω:潮汐周波数] を用いることによって、Internal Tide, Evanescent Wave, Partial Quasi-Steady Wave, Quasi-Steady Wave の4つの力学レジームに分類できること、さらに、潮汐流が強くなり、励起される内部波が Partial Quasi-Steady Wave や Quasi-Steady Wave になってくると、超深海の海底地形上におけるエネルギー散逸率の大きさ、その減衰スケールともに、既存の海底境界混合のパラメタリゼーションの式(St. Laurent et al.,2002)では、海底地形上におけるエネルギー散逸量の見積もりに大きな誤差が生じてしまうことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年12月に伊豆-小笠原海嶺近傍における海底地形の凹凸の激しい地点を数点選んで乱流観測を行ったところ、本研究で新たに定式化されたパラメタリゼーションによる予報値と実際の乱流観測値との間に有意な「ずれ」が生じることが判明した。このため、この12月の観測時の状況にあわせた数値実験をさらに数回繰り返すことで この「ずれ」の原因を解明し、その結果をフィードバックすることにより、超深海乱流のパラメタリゼーションの式を改良していくことが必要になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、改良した超深海乱流のパラメタリゼーションの式に含まれる「海底地形の凹凸の卓越波数」、「海底地形の高さ」、「潮流の強さ」などの各物理量を世界大洋の海域ごとにおさえることで、各大洋の深海における乱流拡散強度のグローバルマッピングを行うとともに、その結果をグローバルな海洋大循環モデルに組み込むことで、本研究の成果を確認していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者によって新たに完成された超深海乱流のパラメタリゼーションの有効性を確認するため、平成26年12月に伊豆-小笠原海嶺近傍における海底地形の凹凸の激しい地点を数点選んで乱流観測を行ったところ、パラメタリゼーションによる予報値と実際の乱流観測値との間に有意な「ずれ」が生じることが判明した。このため、この12月の観測時の状況にあわせた数値実験をさらに数回繰り返すことで この「ずれ」の原因を解明し、その結果をフィードバックすることにより、超深海乱流のパラメタリゼーションの式を改良していくことが必要になった。以上の理由により、超深海乱流パラメタリゼーションの海洋大循環モデルへの組み込みと研究成果の発表の機会が得られなくなり、未使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、上記観測時の状況にあわせた数値実験をさらに数回繰り返すことで超深海乱流パラメタリゼーションの式を完成させるとともに、その結果を海洋大循環モデルに組み込む。さらに、こうして得られた研究成果を国内および国際学会で発表していく。未使用額はその経費に充てることとしたい。
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