研究課題/領域番号 |
24340112
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋友 和典 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10222530)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 深層対流 / 状態方程式 / 乱流 / 混合層 / 極海域 / 海氷 / 負のフィードバック |
研究概要 |
南極ウェッデル海などに見られる低温・低塩な混合層が高温・高塩な深層に重なる二層構造の水柱の安定性について、昨年度に引き続いて数値モデル実験を行い、そのメカニズムを詳細に調べた。海面の冷却は結氷を促し、その時排出されるブラインによって混合層上端では海水が高密度化する。これによって駆動される対流は、混合層直下の躍層を通して高温・高塩の下層水を取り込む。このこと自体は混合層水の高密度化を促進するように働くが、取り込まれた下層水が持つ熱のため、結氷が抑えられて混合層の高密度化(対流)は弱まる(負のフィードバック機構)。混合層内の塩分増加はそのおよそ半分が結氷に伴うもの、また残りの半分が下層からの取り込みによるものであった。 負のフィードバック機構の強度は混合層内に生じる対流の強さに依存して変化する。すなわち、対流活動が強いほどフィードバック機構が強く働き、混合層の高塩分化が抑えられる(水柱は不安定化しにくい)。対流活動は背景の渦拡散強度と地球の自転効果から大きな影響を受ける。自転効果が水柱の不安定化に要する時間を4割増加させ(25日から35日に増加)、渦係数を4cm**2/sから0.25cm**2/sまで減少させると不安定化に要する時間は14日から66日まで長くなった。特に渦係数の大きさが水柱安定度に大きく影響することを示しており、水柱の安定度に対する時空間スケールの小さな現象(例えば、二重拡散現象)の影響に注目する必要があることを示している。 また、自転効果のない場合や渦係数が小さくなった場合に、混合層内の対流強度は増大するにもかかわらず、水柱の不安定化は抑制されるという一見逆に見える結果が得られたのは非常に興味深い。実験の早い時間帯において、対流強度の増大が見られるのは事実だが、その後、負のフィードバック機構が働き出すことで、この様な結果となることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極域混合層、深層対流・乱流の新たな側面をいくつか明らかにでき、研究は当初の研究目的、研究計画に沿っておおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を受け、実験結果の定量的評価を通して力学メカニズムのより深い考察を加えるとともに、そのパラメータ依存性を多数のケーススタディを行うことで明らかにする。また、南極域の観測結果・モデル結果をもとに本研究成果の検証等を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
モデル計算・解析が順調に進み、実験補助を受ける必要がなくなったこと、およびこれまでの研究成果を学術論文として投稿する作業に予定より少し時間を要し、その掲載料の支払いがなくなったため モデル・データ解析に関わる実験補助と、論文掲載料の支払いに充てる
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