極海域における混合層の安定性と深層対流の特性を、乱流を解像するモデル実験を行うことで調べた。結氷下において、混合層内に発生する対流は地球自転と背景の粘性(拡散)係数によって抑制されるのに対し、混合層の不安定化(深層対流の発生)は逆に早められる。下層の高温・高塩な海水を取り込むことで結氷を抑制するというネガティブ・フィードバック機構が混合層内の対流弱化によって働きにくくなること、混合層底での海水混合の強化がキャベリングによる高密度化を促進することが原因である。粘性(拡散)係数の1桁の違いは深層対流の発生を1ヶ月以上遅らせる効果を持ち、地球規模の深層循環過程に大きな影響を与える可能性が示された。
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