研究課題
本年度の成果を、雲系・エアロゾル系・海洋化学系の順に以下に記す。CloudSatデータから、雲層内の最大レーダ反射率の範囲を-15dBZ以下(非降水)、-15から0dBZ(弱い降水)、0dBZ以上(降水)の3つに分けたところ、最大レーダ反射率が大きくなるにつれて雲の幾何学的厚さが厚くなることがわかった。世界的に広く活用されているGEOS CHEM化学輸送モデルを用い、全球計算にアジア域を50km格子でネストさせて、東アジアスケールの大気汚染物質と海洋起源のDMSの輸送シミュレーションを行った。DMSの大気濃度の再現性を検討したが、最近の大気濃度の変動を再現するためには、海洋中のDMS濃度のデータベースの更新が必要であることが示された。DMS研究の第一人者であるYang G.P.教授の研究室を訪問し、海水に溶存するDMSおよびDMSPを抽出精製するシステムについて学び、GC接続型の測定システムを立ち上げた。航行海域が限られる東シナ海において、年間のDMS放出量を概算に向けて、衛星によるプランクトン種別の現場生産量の見積もりに乗じるプランクトン種別のDMS放出量を実験室にて求める必要が有るため、東シナ海に代表的なプランクトン3種の単離培養を開始した。また大村市において,2011年6月~2012年8月にかけて数日おきに吸引採取されたエアロゾル粒子試料113体について,塩酸可 溶成分の鉛同位体比分析を行った。またそのうち20試料についてはケイ酸塩成分についてSr-Nd同位体比分析を行った結果,秋から冬にかけて中国の鉱床起源と考えられる鉛が飛来していることが明らかになった。また,黄砂が飛来する春には鉱物粒子の起源は中国西部であるのに対し,秋冬の鉱物粒子の起源は中国中西部とより近いことが明らかになった。風の軌道が低い時に中国都市部より人為起源物質が運搬される可能性が示唆される。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した目的や手法、解析内容に照らして、現時点での達成度はおおむね順調に進展していると判断できる。
申請書に記載した内容に沿って、人工衛星データによる雲解析を進めると同時に、海洋化学観測を推進して数値モデルとの比較やその考察を進めていく。
初年度(2012年度)に中国で発生した大規模な反日デモのため、特に中国とのやり取りが多い海洋化学系での研究が若干遅れている。海洋化学系は、本研究の中でも測器の購入など最も研究費を使うグループであるため、昨年度も研究費の使用が先送りになっているためである。今年度は海洋化学系による継続的かつ、より大規模な観測を推進するとともに、データ解析や数値モデル計算の補助などに人件費を集中的に配分していく。
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