研究課題/領域番号 |
24340117
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 光輝 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50312541)
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研究分担者 |
牛尾 知雄 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50332961)
森本 健志 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60403169)
芳原 容英 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (10303009)
高橋 幸弘 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50236329)
鈴木 睦 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主幹研究員 (60142098)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 雷放電 / 高高度放電発光現象 / スプライト / 国際宇宙ステーション |
研究概要 |
スプライトの水平空間分布と親雷放電の放電特性を,国際宇宙ステーションからの雷・スプライト観測装置(JEM-GLIMS)と地上の光学・電磁波連携観測によって明らかにする。さらに,雷放電上空の電磁界と電子密度の時間・空間変動を,時間領域差分(FDTD)法を基にしたモデル計算で求める。これらの定量的比較検証をもってスプライトの発生条件を明らかにし,新しい発生メカニズムを構築することが本研究の目的である。 平成25年度の第一の成果は,JEM-GLIMSで得られる大量データの処理方法を確立し,スプライトの同定が可能となった点である。JEM-GLIMSのカメラデータの画像差引き演算処理方法と,フォトメタデータのピーク発光強度比を計算する手法を開発し確立した。これらの手法によって真上観測データから雷放電発光とスプライト発光とを分離し同定することに成功した。第二の成果として,JEM-GLIMSに搭載されている電波観測器によって,雷放電起源の電波を検出しその電気的特性と時空間変化を特定する手法を確立した点である。特に,雷雲内を進展する放電路から放射されたVHFパルスの受信データから,それらの放射源位置を干渉法により時々刻々特定する手法を開発し確立した。第三の成果は,地上に展開するELF/VLF電波観測ネットワークで,JEM-GLIMSで観測された高高度放電発光現象に関し,それを引き起こした雷放電からの電波を同時観測し,その発生時刻・位置・極性・電波モーメント変化量などの放電特性を推定できた点である。 平成25年度になし得たこれらの成果は,翌年度以降に実施予定のFDTDモデルとの比較およびスプライトの発生条件の解明に繋がる基盤的な業績と位置付けられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JEM-GLIMSで得られる雷放電・高高度放電発光現象の真上光学観測データから,雷放電発光と高高度放電発光とを分離する手法を確立できた。さらにJEM-GLIMSの電波観測データから雷雲内の放電進展路を推定する手法を確立した。これらの研究は当初の計画通りに進捗しており,期待通りの成果が得られているため,順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降に本研究で実施する研究の目的と計画は,次の3つにまとめられる。これらの課題を推進するため,研究分担者および連携研究者と密に連携し定期的なサイエンス会議を開催して,情報共有と今後の解析方針について議論する。さらに国際学会等で海外の研究者と成果について議論し,課題を抽出する。 1、JEM-GLIMSで観測されたスプライトイベントの詳細解析: JEM-GLIMSの観測データをより詳細に解析し,(1)JEM-GLIMSの光学観測データから高高度放電発光現象の水平空間分布を特定する,(2)JEM-GLIMSの光学・電波観測データを相互比較し,高高度放電発光現象の水平空間分布と,親雷放電の時空間進展が水平空間部分に及ぼす影響を定量評価する。 2、FDTDモデルによる雷雲上空での電場強度分布の推定: 高高度放電発光現象を引き起こした親雷放電に関し,JEM-GLIMSの電磁波観測データからその放電の時空間変化を,地上のELF/VLF波動観測データからピーク電流値・電荷モーメント変化などを推定する。それらの物理量を初期値として,時間領域差分法(FDTDモデル)を用い,雷雲上空での準静電界強度・放射電界強度の時間・空間変化を推定する手法を確立する。 3、高高度放電発光現象の全球分布・LT依存性・季節変動の特定: JEM-GLIMSで観測された約2年間分のデータから高高度放電発光現象を統計的に解析し,かつてない高精度の全球分布,LT依存性,季節変動を特定する。さらに,JEM-GLIMSのフォトメタ観測データを用いることで雷雲地上間放電(CG)と雲内放電(IC)を判別する手法を確立したことから,CG/ICの比率の緯度分布を特定し,この分野における世界初の成果創出を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
米国カリフォルニア州に設置してあるELF観測システムを,H25年度内に米国内の別の場所に移設し観測を行う計画をたてていた。しかしながら,移設先の候補地の選定に難航し,かつ,候補地を管理する現地研究機関との調整が不調に終わったため,予定していた移設計画を実行できなかった。このため,確保していた旅費および物品購入費を使用すること無く次年度に持ち越すことになってしまった。 H26年度の11月ごろまでに,米国カリフォルニア州に設置してあるELF観測システムを米国内の別の場所に移設する。このための物品購入費・輸送費・旅費として使用する。
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