研究課題/領域番号 |
24340118
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
関 華奈子 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (20345854)
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研究分担者 |
天野 孝伸 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00514853)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線帯 / 低周波波動ULF / 磁気嵐 / ジオスペース / 環電流 |
研究実績の概要 |
計画3年目である平成26年度には、専用クラスター計算機を用いて、内部磁気圏におけるULF波動と環電流イオンの相互作用についてのシミュレーションを実施した。波動を長時間精度良く記述するために、シミュレーションモデルの質量保存性を改善し、そのテストを実施した。結果として、方程式系を変更してもあまり効果がなかったため、従来の手法に戻し、質量保存性については各シミュレーション結果で注意深く検討する方針に変更した。昨年度から始めたイオンインジェクションを模したシミュレーションを更に進め、RCイオンによるULF励起について、ドリフトバウンス共鳴の理論と比較し、よい一致をみた。また、昨年度から引き続き、開発した環電流モデルの計算結果から電磁場変動を抽出し、放射線帯電子の高精度軌道追尾計算[Saito et al., 2010]の背景電磁場として与える手法の検討を発展させ、放射線帯粒子とULFの相互作用に着目する研究を推進した。その結果、単色波による相対論的電子の動径方向拡散について、電子の持つ磁気モーメントやピッチ角依存性などのパラメータ依存性を調べ、効率よく輸送される磁気モーメントの範囲などに関する知見を得た。さらに、内側境界条件を与える磁気嵐時の電離圏からのイオン流出について手がかりを得るため、大磁気嵐時の光電子観測データの解析をさらに進めた結果、静穏時の低エネルギーイオン流出には太陽活動依存性がないことを示すなどの成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から問題となっていた環電流モデルの質量保存性の問題について、この研究課題で目指している、ULF波動と放射線帯電子の相互作用の研究においては、データ解析時に注意深くその影響を評価することで、問題を回避できる目処がつき、昨年度遅れていた部分に関して解決策を得たため、概ね順調に研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ULF波動のシミュレーション結果を解析する過程で、環電流イオンによる波動の増幅が見られたため、これがプラズマ圏イオンの慣性効果を無視しているためである懸念がある。ゼロエネルギープラズマの移流方程式に基づいてプラズマ圏の時間発展を解くモジュールを開発をさらに進め、原因を究明する予定である。昨年度に基本的な部分を確立した放射線帯モデルと環電流モデルを組み合わせる研究手法を活かし、様々なULF波動のモードについて、放射線帯モデルとの結合計算を実施し、各モードにおける放射線帯電子と波動の相互作用過程を理解した上で、古典的な拡散過程で記述できるのか、できる場合には拡散係数はどのように決まるのか、できない場合には加速・輸送効率はどのように記述すべきか(定式化の方法)などのULF波動による放射線帯粒子加速の解明に本質的な課題に取り組む計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文出版費として見込んでいた分の予算が、請求書が年度内に間に合わなかったため、次年度に使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に出版した論文の出版費および成果発表用の旅費として使用する。
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