研究課題/領域番号 |
24340119
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
海老原 祐輔 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (80342616)
|
研究分担者 |
吉川 顕正 九州大学, 学内共同利用施設等, 講師 (70284479)
深沢 圭一郎 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (50377868)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 磁気嵐 / サブストーム / 放射線帯 / 超高層物理学 |
研究概要 |
内部磁気圏に捕捉された荷電粒子の基本的な輸送モードは対流である。朝側から夕側へ向かう対流電場によって荷電粒子がプラズマシートから内部磁気圏へ流入し、断熱的に加速する。これが磁気嵐の基本メカニズムであり、放射線帯外部供給説の基本原理である。高精度電磁流体(MHD)シミュレーションを用いて磁気的擾乱時における内部磁気圏電場の再現実験を行い、サブストームの直後、対流電場の極性が反転することをMHDシミュレーションで初めて示した。極から赤道に至る地磁気変動を観測と比較し、両者が概ね一致することを確認した。 アルベン波による磁気圏と電離圏結合過程を物理的に正しく理解するため、Hall電流発散の電離圏閉じ込め問題を中心とした考察を行った。通常のアルベン波伝導度は電離層伝導度比べて小さいため、ホール電流発散に伴う過剰電流の大部分は、アルベン波を媒体として生成される沿磁力線電流として磁気圏に漏れ出す。これがPedersen 電流と閉じて電離圏内に閉じ込められ、それに伴う分極場によって対流の局所回転を促すことを見いだした。 サブストーム時には高エネルギー荷電粒子が内部磁気圏で急増する。その原因として、内部磁気圏での直接的な加速もしくは磁気圏尾部で加速された粒子の輸送の二つが考えられている。グローバルMHDシミュレーションでえられたサブストーム時における磁気圏中の電磁場の中に数千万超個のテスト粒子を投入し、高エネルギー酸素イオンの6次元分布関数の再現を試みた。初期温度数十eVの酸素イオンはただちに加速され、サブストーム・オンセット付近から数分以内で数100keVのエネルギーを持つイオンが静止軌道付近に現れた。分布関数のエネルギー対時間分散スペクトル構造は観測をよく説明することがわかった。この初期結果では、磁気圏近尾部でおこる非断熱加速とともに、地球方向への輸送も同時に良く働くことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブストーム時における内部磁気圏電場(対流電場)の物理過程をグローバルMHDシミュレーションによって理解することができた。サブストーム・オンセット直後には対流が逆転する過程を始めてグローバルMHDシミュレーションによって再現に成功し、この現象の全体像を提示することができた。内部磁気圏電場は磁気嵐だけではなく、放射線帯形成に関わる外部供給説において極めて重要であり、当該年度の研究成果を換言すると外部供給説の基本原理を明らかにしたと言うことができる。一方、サブストームにおける荷電粒子の加速・輸送過程の全体像についてもテスト粒子計算によって得られつつある。イオンの6次元分布関数の再構築に成功し、サブストーム・オンセット直後には磁気圏近尾部における加速と内部磁気圏への輸送過程がともに有効に働くことを明らかにした。これは放射線帯外部供給説にとって重要である。以上の理由により、当該年度においては概ね順調に進展していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
高精度グローバルMHDシミュレーションを実行することによりサブストームにおける内部磁気圏電場の基本的な物理過程を理解したが、次年度はより時間スケールの長い磁気嵐における内部磁気圏電場の基本的な過程の再現と理解に取り組む。予備的シミュレーションによると、南向きの惑星間空間磁場が継続するとサブストームが準周期的に発生し、内部磁気圏では定常状態にならないことが分かった。グローバルMHDシミュレーションと移流シミュレーションを結合し、このような非定常場における粒子の輸送過程を調べるとともに、グローバルMHDシミュレーションとテスト粒子シミュレーションを結合して電子とイオンの循環、加速、輸送過程を調べる。太陽風-磁気圏-放射線帯-電離圏結合モデルを完成させ、放射線帯形成に関わる外部供給説の検証を分布関数に基づき行う。一方、放射線帯形成に関わる内部加速説を検証するため、非線形コーラス波による加速過程をリウビウの定理を満足する形で定式化し、移流シミュレーションに組み込む。最終年度は、これらを統合して外部供給説と内部供給説を説明するシミュレーションを完成させ、衛星観測との比較を通して両過程の比較を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
サブストーム発生時における内部磁気圏電場変動に関する論文の投稿が遅れ、当該年度において論文の出版費が不要となった。 サブストーム発生時における内部磁気圏電場変動に関する論文の出版費に充てる。
|