研究課題
本プロジェクトでは、南海プレート境界の不均質滑りの実態解明と前弧テクトニクスとの相関抽出を目指して、深部低周波微動の解析と四万十川の離水年代による地形変動解析および、深部で鍵を握ると考えられる蛇紋岩について三波川帯の例を取扱い、鉱物共生と構造の関係について解析を行なった。平成28年度は、東赤石岩体におけるアンチゴライトを含む蛇紋岩中の構造発達を化学反応解析と構造地質学の観点で追求し、構造発達の素過程について学会において成果を公表した。(1)2つの蛇紋岩化ステージおける反応の進行は、それぞれ見かけ閉鎖系と開放系に近く、指数関数的スケーリングが両者で異なる。特にメートルスケールの層状構造の発達は開放系における特徴である。構造のサイズと空間分布は、前者は核形成によって、後者は反応と物質移動によって支配されると考えられる。(2)共存するクロムスピネルは、アンチゴライト核形成の化学的ソースの役割を果たす。その変形組織は物質移動により歪みの一部が補填されることを示す。また、GISを用いた四万十川流域の地形発達解析から、河口の特徴を有する中流域(旧窪川)の隆起が明らかとなり、離水年代学データの地形学的解釈が可能となった。西部地域に新たに認識された隆起地形から地形発達の新たな切り口を見出すことができた。前年度までの西南日本の重力測定結果を説明できるマントルの蛇紋岩化率を計算し、西へ向かって蛇紋岩化率が上昇していることを見出した。この結果は、沈み込むフィリピン海プレートの年齢に応じた温度構造の違いで説明でき、蛇紋岩分布がゆっくり滑りの特徴の違いを説明できる可能性を示している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Lithos
巻: 254-255 ページ: 53-66
10.1016/j.lithos.2016.02.022
Journal of Petrology
巻: 56 ページ: 1113-1137
10.1093/petrology/egv031