研究課題
まず、四万十付加帯興津メランジェ直上の古震源断層(境界断層)について、これまでに行った研究により、境界断層を挟んで上盤側の野乃川層側約1kmと下盤側の興津メランジェ約500mの計52地点からジルコンFTデータが得られ、インバージョンにより加熱イベントの時期を48±6Ma(2SE)と求めることが出来ている。そこで、投稿論文作成に向けて、解釈の詰めの作業を行った。具体的には、インバージョンの際に用いたFT熱アニーリング関数が試料依存性を持たないかどうかについて、年代と放射線損傷量の異なる標準試料などの加熱実験データを取りまとめ、詳細な検討を行った。その結果、100Maよりも若い年代レンジにおいては、有意な依存性が見られないことが明らかになり、加熱イベントの時期を確定することが出来た。そこで、この年代値の持つ地質学的な意味を、既報の熱年代データおよび地質学的な制約条件も入れて検討した。その結果、四万十付加体の形成・進化における“out-of-sequence thrust”の活動時期として解釈されることが判明した。また、加熱イベントの期間・温度を推定するため、上記の試料などについて、ジルコンを用いた(U-Th)/He年代を測定するための準備を進めた。連携先であるJAEA東濃にある(U-Th)/He年代システムについて、データ較正についての検討を進めた。特に一部のアパタイトにおいて見られる有意に古い年代値の原因について詳細に検討を行い、システムではなく試料に依存した問題であることを明らかにした。さらに、断層ガウジの自生イライトを用いたK-Ar(Ar/Ar)法による年代測定の予察的研究については、最終活動履歴のわかっている有馬高槻断層系において、地表露頭の断層ガウジを用いて粒度と相関する約40-50Maの予察的年代値が得られており、論文化に向けた作業を進めた。
2: おおむね順調に進展している
各項目ごとに多少の遅早はあるが、全体的には当初の目標に向かって順調に進んでいるため。
IODPによる現世の震源断層のうち、日本海溝の東日本大震災震源断層については、年代測定に適した試料が確認されなかったので、今後は南海トラフの付加体中の分岐断層と陸上の古付加体を中心に進める予定である。
東日本大震災震源断層について、年代測定に適した試料が確認されず、研究が進められなかった事などによる。方解石脈と断層ガウジの年代測定には進捗が見られたので、それらを更に進めると共に、投稿論文として取りまとめる。加えて、ジルコンを用いた(U-Th)/He年代測定を進め、研究を取りまとめる。また、国際会議での成果発表を最低2回予定している。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件)
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