研究課題
人間活動によって、生態系がどのように変化したかを調べるため、小笠原諸島や琉球列島の陸貝化石の炭素、酸素同位体比の分析を行った。これと殻の形態解析の結果との比較に基づいて、それぞれの集団の生活様式の推定を行った。これと日本本土、小笠原および琉球列島の現生陸貝から得られた生態情報と殻形態の情報との比較から、上記の関係の一般性を検討した。さらに現生個体群について遺伝的変異の分析を行い、集団の履歴や過去の環境変化が集団構造にどのような影響を及ぼしたかを推定した。その結果、特に琉球列島では顕著な過去の集団サイズの減少や交雑が、環境変化によって引き起こされた可能性が示された。これらは化石記録から得られた群集組成の変化、種の絶滅などの事象と調和的である。各地点の化石の産出状況の解析と、それに基づく環境推定を行い、人が入植する以前の陸貝相やその形態的特徴、さらに当時の陸貝の生態やそれをとりまく生態系の推定を行った。その結果、最終氷期の終わる今から1万年前に、植生が湿性なものから乾性なものへと急速に変化し、それにともなう絶滅と種構成の変化が示された。この時期に集団レベルで形態変化と色彩の変化が生じることが示された。人の入植した300年前以降にも大きな植生の変化があり、それに伴い群集構成はさらに乾性的なものにシフトした。以上の結果から、現在の群集や集団の性質は、最終氷期末の自然環境の変化と、300年前以降の人為的なインパクトにより植生環境の急速な変化が生じたことに応答して形成されたことを示す。過去においては現在よりも湿性な植生が広く分布し、その環境を好む陸貝群集が成立していたと考えられた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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