研究課題
平成27年度は,白亜系・蝦夷層群(北海道)の調査を継続した.その結果,オルステン型化石鉱脈の鍵となる糞粒ペレット層の実例をさらに増やすことに成功した.特に,シェルター保存を示す大型アンモナイトの殻内や殻下部の空間には,糞粒ペレットが保存されているケースが決して稀ではないことが明らかになった.これらの糞粒はさまざまな形状・サイズ・色調・保存状態を示す.腐敗・分解が進んだ大型ペレットを含む層準からは,アンモナイトやイノセラムスの幼殻を産出する一方,軟体部保存を示す化石は見いだせなかった.他方,組織が緻密な一部の糞粒密集層中からは,アンモナイトやイノセラムスの胚殻に加え,非常に保存の良いケイソウ遺骸や介形虫の殻などが例外的に産出し,付属肢など軟体部が保存されている可能性があるものが見つかった.ただし,これらは保存がよい反面,物理的に非常に脆く,処理する酸の濃度が高すぎたり水洗の勢いが強すぎると,せっかく3D保存されていた化石の軟体部が処理の過程で破損・断片化してしまい,軟体部の3D保存を証拠づける完全個体が得にくいことがわかった.そのため,酸の濃度を極力薄くし,流水による水洗を省略するなど工夫を重ねた処理(追加作業)を現在も継続中である.この追加的作業によって完全個体の画像データが得られ次第,成果を学術誌に投稿し,公表する予定である.他方,ジュラ系・来馬層群(富山県),新第三系・師崎層群(愛知県)を調査し,さらに白亜系石版石石灰岩(ヨルダン)などの試料を収集してオルステン型化石鉱脈の保存・産状と比較した.その結果,石版石石灰岩中の異常巻アンモノイド:Allocriocerasの殻内に軟体部保存の痕跡を発見するなど,予想外の新知見が得られた.今後,オルステン型化石鉱脈以外のモデルも含め,化石の軟体部保存を多角的に解明してゆく必要がある.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
研究紹介
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 433 ページ: 129―139
doi:10.1016/palaeo2015.05-013.
http://www.museum.kyushu-u.ac.jp/geo/Ammo_Labo.htm