研究実績の概要 |
25-20億年前の古原生代に地球史上最大の地球表層環境変動イベントが起こった。我々はこの時代の大気酸素上昇を鉱物-水-大気の相互作用からとらえ、古土壌でのFeの挙動と大気酸素濃度の関係を速度論から定量的に示し、従来の説と異なる「緩やかな酸素上昇」パターンを初めて提唱した。一方、微量元素(V, Cr, Co, Ni, Cu, Zn, Mo, W, Th, U)は様々な酸化還元ポテンシャルを持つので、当時の大気酸素濃度に応じ、それぞれ特有の挙動を示すはずで、Feの挙動から得られた大気酸素進化説を補強あるいは修正することが期待できる。28-18億年前の微量元素の古土壌中での保持率(古土壌と母岩での濃度比)とその保持率とSiの保持率の相対的関係を指標とし、古土壌中での微量元素の挙動を解析し、大気酸素の進化を調べた。その結果、初期古原生代に古土壌から流出し、後期古原生代に古土壌に保持される微量元素グループ(Co, Ni, Zn, W)と、逆に初期古原生代に古土壌に保持され、後期古原生代に古土壌から流出する微量元素グループ(V, Cr, Cu, Mo, U)に分かれることがわかった。さらに流出と保持のタイミングの年代は元素ごとに異なっていた。これは古原生代の短い一定期間(例えば、数百万年~千万年)で大気酸素濃度が急上昇したのではなく、古原生代を通じて徐々に酸素濃度が上昇したという説と整合的である。このことは、大陸の酸化的風化が古原生代を通じて徐々に進行したことも示し、海洋の化学組成の年代変化もこれに準じていたと考えられる
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