研究課題
26年度は2種類の研究において次の成果を得ることができた。1 流体包有物に関して。東北日本弧の背弧側に位置する秋田県男鹿市の一ノ目潟火山に産出するマントルレルゾライト捕獲岩を観察した。その結果、炭酸塩鉱物と塩水からなる流体包有物の存在をラマン分光法とマイクロサーモメトリー法により確認した。塩水は3.7%プラスマイナス0.8%の塩濃度を持つことがわかった。結果は、熊谷ほかの著者によって雑誌に出版した。2 高温度高圧力実験に関して。マグマと水流体の間の微量成分元素の分配を知るためのその場観察実験に成功した。実験はフランス人研究者の協力のもと、フランスの放射光実験設備で行った。その結果、元素分配に与える圧力の効果を理解したほか、マグマと共存する水流体の塩濃度が分配に与える影響を見積もった。沈み込み帯の火山弧の直下ではスラブから超臨界流体がマントルウェッジに加わると考えているが、その超臨界流体には塩素が含まれていて、水流体とマグマに分離する際に、水流体には塩素に加え鉛などのイオン半径の大きな不適合元素が濃集する可能性があると提案した。そう考えると、沈み込み帯に産出する火山岩の化学組成の特徴である「マグマ(メルト)的要素」と「塩水的要素」を旨く説明することができる。結果は、川本ほかの著者によって雑誌に出版した。
1: 当初の計画以上に進展している
マントルウェッジ中の流体包有物で塩水の流体包有物を発見したのみならず、高温度高圧力条件下で元素分配に与える塩濃度の影響を理解することに成功した。さらには、高圧変成岩中の流体包有物中に塩水を発見し、その塩濃度は海水に似ていることを示した。
計画通り、実験的研究と記載岩石学の両面から、沈み込み帯での塩水の移動過程を研究する。
使用するラマン分光器の光学系が故障したので、ラマン分光法を用いた実験と流体包有物の記載が滞ってしまった。
ラマン分光器の光学系を直し、遅れていたラマン分光法を用いた実験と流体包有物の記載を行う。
すべて 2015 2014 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件)
Earth, Planets and Space
巻: 66 ページ: 61
10.1186/1880-5981-66-61
Contributions to Mineralogy and Petrology
巻: 168 ページ: 1056
10.1007/s00410-014-1056-9