研究課題
本年度は、初年度に採取された長尺コア試料のうち2本(WLC1bコア、WLC2コア)より、50cm間隔でサブサンプリングされた堆積物試料から抽出された有機成分の分析を進め、バイオマーカーによる各種熟成度を得た。また、同じサブサンプルから、粘土鉱物を回収し、分析を行った。その結果、熱水の影響が限定的で深度と共に単純に温度が上昇すると考えられたWLC2コアにおいて、それにほぼ対応するように各種熟成度指標が熟成を示す方向へ変化し、コア最深部(海底から約8.5m)では、石油の生成・排出が起こっていると判断された。この最深部が示す熟成度を温度に換算するとおおよそ120℃であった。一方、海底から2m以深で熱水の混入が推測されるWLC1bコアでは一部のバイオマーカーを欠いていたが、WLC2コアに対して低い熟成度を示す指標が多く、100℃に達していないことが推察された。また、粘土鉱物はすべてのサブサンプルから分析に充分な量を回収できるに至らなかったが、モンモリロナイトが多く、イライト/スメクタイト混合相鉱物は一部にしか含まれていなかった。これらの粘土鉱物組成は、既往の研究に照らして熟成度から推定された高くとも120℃程度の経験温度という見積と調和的である。回収された粘土鉱物には層間にアンモニウムイオンを含むものが認められ、3試料でその窒素同位体比が計測された。間隙水中アンモニアと粘度鉱物中のアンモニウムイオンの窒素同位体比の関係から見積もられた平衡温度は300℃を超える値となった。恐らく、粘土鉱物に取り込まれたアンモニウムイオンは現在の間隙水中にあるアンモニアと異なる窒素同位体比を持っていたものと考えられ、その結果、矛盾する推定値となったと考えられる。これらのことから、熱水性石油は早ければ数十年程度の時間であっても通常のoil window(60~150℃)において生成することがわかった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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日本地熱学会誌
巻: 37 ページ: 13-26
Geochemical Journal
巻: 48 ページ: 357-369
10.2343/geochemj.2.0311
http://earth.desc.okayama-u.ac.jp/~benthos/aira/