交付申請書記載の「研究の目的」は、「研究代表者が新規に開発した静電バリア付き小型軸対称磁気ミラー閉じ込め装置の性能を評価したうえで、当該装置を用いてこれまで理論的にしか研究されてこなかった電子-陽電子プラズマの特性を実験的に研究すること」である。これまでに、新規に開発した静電バリア付き小型軸対称磁気ミラー閉じ込め装置の性能を評価し、研究目的に使用可能なことを実証すると共に、実験に必要不可欠な低エネルギー陽電子蓄積装置を理化学研究所に整備した。交付申請書の「研究実施計画」では、平成26年度は 広島大学にある小型磁気ミラー閉じ込め装置を理化学研究所に移設し、電子-陽電子プラズマの実験が可能な状態にするとともに、低エネルギー陽電子蓄積装置で10の7乗個の低エネルギー(<1eV)陽電子の蓄積を目指し、最終的に電子-陽電子プラズマ実験を実施することが具体的な内容となっている。 小型磁気ミラー閉じ込め装置は平成26年9月初旬に理化学研究所に移設し、平成27年1月末には低エネルギー陽電子蓄積装置とともに運用を開始することができた。後者については、平成26年12月末の時点で5mCi 22Na密封線源と固体ネオン減速材を用いて、3x10の5乗slow e+/sの低エネルギー陽電子が得られており、蓄積装置において30sで1x10の6乗個、120sで2x10の6乗個の陽電子の蓄積に成功している。結果として、低エネルギー陽電子を磁気ミラー中に閉じ込めることに成功し、その磁気ミラー閉じ込め時間が100ms程度であることが確認された。これにより研究期間中に、電子と陽電子の同時閉じ込めが可能になる段階まで研究を遂行することができたといえる。また、関連する研究テーマとして、非中性プラズマにおける自動励起現象や位相空間分布の時間発展について新たな知見を得ることができた。
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