研究課題/領域番号 |
24340146
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
畑山 明聖 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10245607)
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研究分担者 |
宮本 賢治 鳴門教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (00532996)
深野 あづさ 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (90259838)
水野 貴敏 玉川大学, 工学部, 助教 (80512459)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水素負イオン / プラズマ物理 / 電子エネルギー分布 / ビーム引き出し / PICモデル / ビームハロ / 表面生成 / メニスカス |
研究概要 |
水素負イオン源は、核融合プラズマ加熱、加速器、産業応用など、幅広い応用分野を有している。本研究では、マルチカスプ・アーク放電型水素負イオン源を研究対象とし、特に、大型負イオン源からの一様・大電流かつ収束性の良い負イオンビーム引き出しの実現にとって不可欠な以下の課題を、主に数値モデリングの立場から明らかにすることを目的としている。 1.大型負イオン源における負イオン生成の空間的非一様性発現機構の解明 2.多量の負イオン存在下でのプラズマ電位構造・引き出し界面形成機構の解明 上記、目的に対して、今年度、主として以下の成果を得た。 1.非一様性発現機構の解明:電子エネルギー分布関数(EEDF)解析コードを大型イオン源解析に適用し、イオン源内のEEDFおよび解離性中性原子の生成量の空間分布を計算した。解析結果を電子温度・密度分布、水素原子発光線(H_α儀線)強度分布などの実験結果と比較した。その結果、負イオン表面生成分布の非一様性は、高エネルギー電子成分の空間分布の非一様性とそれに起因する水素原子の解離生成分布の非一様性に起因することが示された。 2.負性プラズマ電位構造・引き出し界面形成機構の解明:運動論的粒子コード(PICコード)を用い、大型イオン源の引き出し領域をモデル化し、正イオン・電子・表面生成負イオンのダイナミックスと電極近傍の電位構造とを自己無撞着に計算した。その結果、多量の表面生成イオン存在下では、正イオンと負イオンのみから成るいわゆる"ダブルイオンプラズマ"が形成されることを示した。この"ダブルイオンプラズマ"が引き出し界面(メニスカス)形成と引き出されるビームの収束性について重要な役割を演じることを示した。特に、従来、未解明であったビームハロの形成機構が、このようなダブルイオンプラズマ中に形成される引き出し界面の形状により説明できる可能性があることをはじめて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究目的、特に以下、二つの具体的達成目標:1.非一様性発現機構の解明、2.負性プラズマ電位構造・引き出し界面形成機構の解明、に対して、上記、9.「研究実績の概要」の項で述べたような成果を得ている。特に、第2の目標については界面形成機構に加えて、ビームハロ形成機構について新しい知見を得ることでき、さらに、その成果を論文にまとめ学術誌(Applied Physics Letter)に報告した。
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今後の研究の推進方策 |
上で述べたように計画は概ね順調に進展していると考えられる。今後も、申請書の計画に従い水素負イオン源プラズマのモデリングをさらに進め、一様大面積負イオン生成と引き出しの物理の解明に努める。 また、連携研究者や外国人研究者をも含む研究集会を9月に開催し、実験結果との比較、モデリング妥当性検証を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度予算のうち、助成金に未使用額が生じた。その主な理由は、(1)海外出張(2名分)の予定が延期になった、 (2)消耗品の発注、計算作業の一部を次年度に執行することにした、ためである。いずれについても次年度確実に使用予定である。
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