研究課題
2波長レーザー分光法を顕微鏡に利用することで光の回折限界を凌駕する極めて高い空間分解能、すなわち超解像を実現することが可能である。本研究課題では、この超解像レーザー顕微鏡法を赤外波長領域まで拡張した超解像赤外分光イメージング技術を生体試料切片から生細胞に至るまで幅広く適用し、極微小空間における局所構造・機能を分子レベルで観察・解析することが可能な「ナノ空間機能解析」法の確立を目指した。平成27年度は、特に、振動和周波検出赤外長解像顕微鏡法による毛髪α-ケラチンの分子配向イメージングに精力的に取り組み、α-ケラチン由来のVSFG信号強度が著しい偏光依存性を示すことを明らかにした。α-ケラチンの最小ユニットであるコイルドコイル構造の対称性と本研究における実験上の光学配置を考慮して、振動和周波発生の理論解析を行った結果、信号が強く観測される偏光の組み合わせはすべてキラル分子に由来するものであり、アキラル分子に由来する信号はほとんど観測されていないことが明らかとなった。この現象は、α-ケラチンの最小ユニットであるコイルドコイル構造の配向関係で説明することができる。すなわち、隣り合う2つのコイルドコイル構造がパラレル配向している場合は、キラルおよびアキラル信号は理論上、共に強くなる。一方、アンチパラレル配向をしている場合は、キラルは信号が強くなるのに対し、アキラルは打ち消し合い信号が観測されない。実験結果は、後者と合致しており、これにより、毛髪α-ケラチンは最小ユニットであるコイルドコイル構造がアンチパラレルに配向していると結論した。以上のように、本研究課題において、超解像赤外イメージングにより赤外マッピングが超解像で得られるだけでなく、分子配向やキラルの情報も観測することが可能なまさに新規な「ナノ空間機能解析」法の確立に成功した。今後、本手法が様々な分野で利用されることを期待する。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Phys. Chem. Chem. Phys.
巻: 17 ページ: 2494-2503
10.1039/C4CP04584J
高分子
巻: 64 ページ: 588-589
光学
巻: 38 ページ: 344-349
http://www.csd.res.titech.ac.jp/indexj.html