研究課題/領域番号 |
24350008
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 淳也 北海道大学, 触媒化学研究センター, 教授 (30322168)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 凝集系 / 蛋白質 / ソルバトクロミズム / 分子間相互作用 / 励起状態理論 / 波動関数理論 |
研究概要 |
蛋白質・溶液等の凝集系における分子の励起状態を正しく計算しなければ、光が関わる生命現象の分子メカニズムの解明や光増感太陽電池の分子設計は不可能である。その為には、環境を構成する分子(以下、「溶媒分子」)の量子的効果を記述できる理論を開発することが必要である。 本研究の目的は、凝集系における分光学や励起状態ダイナミクスに応用でき、励起状態としての正しい理論的条件を満たし、励起状態における溶質-溶媒分子間の相互作用を正しく取り扱う、凝集系励起状態の波動関数理論と量子的分子力場を開発することである。開発した方法は、量子的な分子間相互作用が必要となる系に応用して評価する。蛍光蛋白質、レチナール蛋白質、光合成反応中心のポテンシャル面や分光の問題に応用して成果を得たいと考える。 H24年度は、凝集系における溶質-溶媒分子複合系の励起波動関数の構造を研究した。励起状態理論から分子間相互作用の解析的表現を求め、その寄与を評価した。具体的には、(i)確立した励起状態理論を理論的出発点とし、(ii)開発した局在化分子軌道を一電子基底として用い、溶質-溶媒間の励起状態における分子間相互作用の解析的な表現と、それを表現するために必要な波動関数の構造を求めた。実際に、導かれた波動関数を用いて励起状態の計算を行い、数値検証を行ったところ、理論的考察を裏付ける結果が得られ、理論的に寄与の小さい項は、数値的にも無視できる程度の寄与しか与えないことを実証した。 今後は、波動関数において、より高次励起に由来する項の寄与について、検証を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繰越(翌債)を行ったが、この理由は計算プログラムにおける解の収束性の課題であった。その後の改良により、当該課題は解決できており、現在、予定通り平成25年度の研究を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、研究課題を遂行する予定である。具体的には、波動関数において、より高次励起に由来する項の寄与について、検証を進める予定である。そのために、それら高次項を理論的に導出し、その寄与を計算により評価する。また、計算プログラムが使用可能となった段階において、研究協力者の効用を行い、応用研究について効率的に進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度においては、基礎的な理論と計算手法の考案に研究時間を費やした。そのため、開発した手法の応用計算を支援してもらうための研究協力者の雇用は、次年度以降とすることとした。そのための費用として基金を考え、その使用を次年度以降とした。 平成24年から開発を開始した理論と計算手法とそのプログラム開発が終了する見込みがあるので、平成25年度の後期あるいは平成26年度から研究協力者を雇用して、応用研究を開始する計画である。
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