研究概要 |
振動和周波発生分光(振動SFG分光)は二次の非線形光学過程に基づく手法であり,双極子近似のもとでは反転対称性をもつ系で禁制となり,反転対称性が崩れる界面の振動スペクトルを選択的に得ることができる.このため,液体と接した膜の界面の研究に適している.水溶液界面における膜の振動SFG分光では,液相側からプローブ光を照射すると,赤外プローブ光が水により吸収されるため測定が非常に困難となる.しかし紫外~赤外領域で透過な基板(薄膜SiO_2蒸着CaF_2基板,SiO_2層厚125nm)上に膜を作製し基板側からプローブ光を照射するという配置を用いると,水の赤外吸収による妨害を受ける事なく,SFGスペクトルを測定することが可能になる.今年度は,システイン修飾フルオレセイン単分子膜の水溶液界面での振動SFG分光に取り組んだ.測定に用いた単分子膜試料は,まずシリカ基板上にマレイミド単分子膜を作製し,さらにマレイミド基にチオール基を持つ5-FAM-Cys(システイン修飾フルオレセイン)を結合させることで準備した.振動SFGスペクトルの測定では,振動バンドのSFG信号光のエネルギーが5-FAM-Cysの電子吸収波長(502nm)に一致するように可視プローブの波長を546nmとし,電子共鳴条件下で空気界面,水溶液界面について測定を行った.得られたSFGスペクトルは,界面の雰囲気に依存してスペクトルの形状(強度パターン)が大きく異なっていた.この変化をフルオレセイン基の配向の雰囲気依存性を示していると帰属した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者である石橋は,平成24年9月1日付けで広島大学から筑波大学へ移動したが,移設予定の筑波大学の建物の耐震補強改修が始まったため,新たな移設場所の設定に時間が取られ,測定装置を筑波大学に移設時期が平成25年度3月となった.このため広島大学での移動準備期間も考慮すると平成24年度の研究期間が実質的に4ヶ月程度に短縮されたことが原因である.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度で性能向上のための測定装置のレーザーシステムの補強・更新は,ほぼ終了した.25年度以降は,更新したレーザーシステムをもとに測定装置を構築し,ヘテロダイン検出のための試料部分の製作,生体分子固定単分子膜の作製,ナノ粒子製作に必要な消耗品の購入等に予算を使用する.尚,24年度未使用額については年度末に実験装置(空調機冷却能力強化)として使用したが,支払が4月となったものである.
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