研究課題/領域番号 |
24350010
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石橋 孝章 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70232337)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非線形分光 / 振動スペクトル / 界面 / 生体分子 / 単分子膜 |
研究実績の概要 |
シリカ基板上にポリペプチドやポリヌクレオチドなどの生体分子を固定することを想定したSFG測定用の試料の作製の基礎技術を確立するために,アミノ基を有する化合物を固定するためのNHS基を持つシランカップリング単分子膜を作製した。NHSエステル膜作製のためのシランカップリング用試薬(TUNHS)は、10-undecylenic acid chlorideから2段階反応で合成した。作製したNHSエステル膜のカルボニル基の振動SFGスペクトルには五員環イミドのカルボニル基の振動バンドが現れており、基板上にNHSエステル膜が形成されたことが確認された。NHSエステル膜のアミノ化合物との結合能力は、リジン基を持つクマリン色素の一種であるLA-AMCの固定実験で評価した。反応後の膜の紫外可視吸収スペクトルに、LA-AMC溶液の極大吸収波長324 nmとほぼ同じ波長に吸収バンドが確認され、作製した基板は、アミノ化合物を固定できることが分かった。 信号検出をヘテロダイン方式でも行えるように振動SFG分光装置の検出方法を改造する作業を行った。局所発振器としてYカット水晶薄膜結晶を試料部分の前に直列に配置した。薄膜水晶を透過配置で使用することで広い範囲のプローブ光のパワーが利用できるようになり、実験条件の設定の自由度が各段に広がった。試験測定としてシリカ基板上のオクタデカントリクロロシラン単分子膜の測定を行い、良好な複素非線形感受率スペクトルが得られることを確認した。 ナノ粒子増強VSFGに関しては、金上の自己組織化膜に金ナノ粒子層を重ねた系に関してVSFG信号の増強度を検討した。その結果、可視プローブの波長を適切に設定すれば、VSFG信号が増強することが確認できた。今後、同じ試料に関して自発ラマン散乱の増強度を測定し、比較する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年11月、検出方法のヘテロダイン化作業を実施していたところ、VSFG分光装置の温度制御装置の不具合が発生し、装置が所定の能力を発揮できない状態となり、2ヶ月分の基礎データ収集が十分に行えていないことが判明した。所定の能力を発揮できるよう測定装置の改造を行い2ヶ月分の基礎データーを収集するために、2013年度の予算の一部の繰り越しを申請し認められた。繰り越し分の作業に関しては、ほぼ想定していた作業を行うことができたが、この分の時間的な損失があるため、全研究期間を通してみると当初計画で平成26年3月の作業が平成26年の10月に達成されたことになり、やや遅れているという状態である。
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今後の研究の推進方策 |
繰り越した2013年度予算を使用し,分光装置に付属した装置の不具合を取り除き、VSFG分光装置が所定の能力を発揮できる状態ととなった最適化した装置を使用し,特に高感度であるというヘテロダイン化したVSFGの特徴を生かし,水上の脂質単分子膜等の測定に取り組む.また、ナノ粒子増強VSFGに関しては、VSFG信号の増強が確認できた同じ試料に関して自発ラマン散乱の増強度を測定し、比較検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年11月、検出方法のヘテロダイン化実験に使用していた分光装置に付属した温度制御装置に故障が生じたため、当装置の修理・改造が必要となった。また、この故障の結果、2ヶ月分の基礎データの基礎データに十分な結果が得られていないことが判明し、2ヶ月分の基礎データ収集とヘテロダイン化作業を再度行う必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
振動和周波分光装置に付属した温度制御装置の修理・改造に使用する。
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