ナノ粒子増強振動SFG(以下VSFG)に関して、金上の自己組織化膜に金ナノ粒子層を重ねた系に関して振動SFG信号の増強度を定量的に検討した。試料の反射モードでの紫外可視消失スペクトル、VSFGスペクトルおよび自発ラマンスペクトルの可視プローブ波長依存性を詳しく検討した結果、VSFGおよび自発ラマン信号の増強度は、おおよそVSFG信号波長とラマン励起レーザーの波長が試料の消失スペクトルのピークと一致すると大きくなり、信号増強はプラズモン共鳴の結果であることが示された。一方、自発ラマンの場合の増強度は最大で10の4乗程度の大きな値であるのに対して、VSFGの場合は高々5程度であり、増強度に著しい差が見られた。この違いは、ナノ粒子の大きさや粒子と分子の相対位置関係の不均一性が分極の位相のばらつきにつながり、コヒーレント分光であるVSFGの強度の低下を招いていると解釈した。 ヘテロダイン検出VSFGに関しては、水上単分子膜(L膜)の測定をおこなった。各種偏光条件での測定が可能なように拡張した。ステアリン酸や基本的な脂質であるDPPCに関して、L膜のスペクトルの表面圧依存性を詳細に検討した。またL膜を基板に移し取ったLB膜についても測定を行い、L膜の結果と比較した。分子面密度を補正し分子当たり感受率としたスペクトルは、表面圧の上昇にともないCH2伸縮振動のピーク強度が減少し、CH3伸縮振動のピーク強度の増加した。前者はゴーシュ形を多く含む構造から全トランス形へとアルキル鎖がコンフォメーション変化を、後者は配向性が向上を示している。LB膜のスペクトルはL膜と定性的には対応しているが、定量的に評価するとLE相のL膜に対応するLB膜のL膜よりも高い配向性を持ち、基板上で配向変化を起こしていることがわかった。さらに気液界面の表面過剰タンパク質に関しても、CH、OH、NH伸縮振動領域およびアミドI領域で良好なスペクトルが測定できることを確認した。
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