研究課題/領域番号 |
24350016
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
松尾 由賀利 独立行政法人理化学研究所, 櫻井RI物理研究室, 先任研究員 (50231593)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レーザー分光 / マトリックス分光 / 超流動ヘリウム / 光ポンピング / レーザー・ラジオ波二重共鳴 / レーザー核分光 |
研究概要 |
超流動ヘリウムは紫外からラジオ波に至る広い波長域で透明な媒質である。低温、スピンに対する擾乱が小さいといった特性があり、レーザー分光の新しいマトリックス環境として大きな可能性を持つ。ヘリウム中に導入されたアルカリ原子に関しては、周囲のヘリウムとの相互作用の影響にも関わらず、光ポンピングと二重共鳴法の組合せで精密分光が可能であることが最近示された。本研究課題は、これまで全く精密分光が試みられていないヘリウム中のアルカリ土類様Ba+,Yb+イオンを対象に光ポンピング法を適用し、精密レーザー分光を行うことを目的とする。 本課題遂行のために、(1)超流動ヘリウム中への原子イオン導入と光検出、(2)光ポンピングのための光源開発とこれを用いたレーザー・マイクロ波/ラジオ波二重共鳴実験、(3)加速器で生成されるビームを用いた実験を並行して進めている。 平成24年度は、(1)二段階レーザーアブレーション法を用いてヘリウム中へ中性原子を静かに導入する場合と同じ方法で、Ba+イオンを静かに導入してレーザー誘起蛍光(LIF)を検出することに成功した。ここではイオン導入と光検出が目的であるので、繰返しレートの低い(10Hz)パルス色素レーザーを用いた。(2)超流動ヘリウムのトラップ媒質としての特性を活用すると、cw(連続光源)レーザーでなくても、高繰返しパルスレーザー(1kHz以上)であれば光ポンピングが可能である。そこで、パルスチタンサファイアレーザーを自作し、Yb+イオンの励起波長に近い370nm付近でヘリウム中光ポンピングに必要な100mWの光を出力させることに成功した。(3)加速器で生成されるRbイオンビームを超流動ヘリウム中に入射した後、閉じ込められたRb原子に対して、光ポンピングとレーザー・ラジオ波二重共鳴法を適用することに成功した。この結果、本手法が加速器からのビーム入射に対しても有効であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標としていた二段階レーザーアブレーション法による原子イオンの超流動ヘリウム中への静かな導入と光検出を達成したことは重要なステップである。目的とする発振波長が得られていないために、光ポンピング実験には至っていないが、光源開発も着実に進行している。加速器から入射されたビームに対する実験では原子に対するレーザー・ラジオ波二重共鳴が行われ、準備実験として計画以上に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
超流動ヘリウム中原子イオンからの光検出を達成したとはいえ、再結合による消滅時間が明らかになっておらず、イオンの寿命測定を行う必要がある。光ポンピング過程に十分な寿命が得られた段階で、光ポンピング、二重共鳴実験へと進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
Ba+およびYb+イオンの光ポンピングに必要な波長の光源を得るために、引き続き光源の整備を進めていく。H24年度基金分未使用の3,300,000円をこれに充当する。さらに、二重共鳴実験に必要なマイクロ波およびラジオ波の発振器、増幅器については、当初予定していたH25年度経費にて整備を行っていく。
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