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2014 年度 実績報告書

超流動ヘリウム環境におけるイオンの精密分光

研究課題

研究課題/領域番号 24350016
研究機関法政大学

研究代表者

松尾 由賀利  法政大学, 理工学部, 教授 (50231593)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードレーザー分光 / マトリックス分光 / 超流動ヘリウム / 光ポンピング / レーザー・ラジオ波二重共鳴 / レーザー核分光
研究実績の概要

超流動ヘリウムは紫外からラジオ波に至る広い波長域で透明な媒質である。低温、スピンに対する擾乱が小さいという特性があり、レーザー分光の新しいマトリックス環境として大きな可能性を持つ。液体ヘリウム中に原子やイオンを導入するのは、良く知られている他の希ガスマトリックスに比べて取扱いが困難なため、精密分光があまり進展していなかった。しかし、近年レーザーアブレーション法および加速された高速イオンビームを用いて主にアルカリ原子を導入し、光ポンピングと二重共鳴法の組合せによる精密分光が可能になってきた。本研究課題では、アルカリ原子と同様の準位構造を持つアルカリ土類イオンをヘリウム中に導入して光ポンピング法を適用し、精密レーザー分光を行うことを目的とする。このため、1、超流動ヘリウム中への原子イオン導入と光検出、2、光ポンピングのための光源開発とこれを用いたレーザー・マイクロ波/ラジオ波二重共鳴実験、3、加速器で生成されるイオンビームを用いた実験を並行して進めている。
平成26年度は、1、二段階レーザーアブレーション法で液体ヘリウム中に導入したBa+イオンの個数が少なくレーザー誘起蛍光(LIF)信号が微弱であった問題に対処するため、液中レーザーアブレーション法による導入を試みた。2、超流動ヘリウムのトラップ媒質としての特性を活用すると、cw(連続光源)レーザーでなくても、高繰返しパルスレーザー(1 kHz以上)であれば光ポンピングと二重共鳴を行うことが可能である。これまでcwレーザーで実績のあるRb原子に適用可能なパルスレーザー(1-3 kHz)を製作し、これを用いて光ポンピングと二重共鳴の観測に成功した。3、加速器で生成されるRbイオンビームを超流動ヘリウム中に入射し、導入された原子のゼーマンおよび超微細構造準位間の遷移を観測した結果について詳細に解析し、複数の同位体のスピンを導出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

二段階レーザーアブレーション法でヘリウム中に導入したBa+イオンの個数が少なくレーザー誘起蛍光(LIF)信号が微弱であった問題に対処するため、液体ヘリウム中レーザーアブレーション法による導入を試みたが、まだ十分な信号強度を得ていない。一方、波長可変かつ液体ヘリウム中の光ポンピングに十分な繰返しレートを持つパルスレーザーを製作し、cwレーザーと同等以上の光ポンピングおよび二重共鳴信号の観測に成功しており、レーザー開発は順調に進行している。

今後の研究の推進方策

超流動ヘリウム中原子イオンからの光検出は可能になったが、試みた複数の導入方法はいずれも個数が少なく十分な信号強度を得ることができていない。パルスレーザーによる光ポンピング技術、および、加速器実験で得られている少数個の粒子の光検出技術を生かして、光ポンピング、二重共鳴実験へと進めていく。

次年度使用額が生じた理由

26年度にBa+イオンの液体ヘリウムへの新規導入法と光ポンピング用レーザーを開発してBa+の光ポンピングを行う予定であったが、ヘリウムへの導入効率が良くなかったため、予定を変更しRb原子での光ポンピング検証実験を先行して行った。このため、Ba+用レーザー開発費用と液体ヘリウム費用を次年度使用額とした。

次年度使用額の使用計画

Ba+用レーザー開発と液体ヘリウムを使用した実験を行うこととし、次年度使用額はその経費に充てる。加えて、成果発表のための旅費、および校閲費用にも一部充当する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Laser-radio-frequency double-resonance spectroscopy of 84-87Rb isotopes trapped in superfluid helium2014

    • 著者名/発表者名
      X. F. Yang, T. Furukawa, T. Wakui, T. Fujita, K. Imamura, 他18名, H. Ueno, T. Shinozuka, T. Shimoda, K. Asahi, Y. Matsuo
    • 雑誌名

      Phys. Rev. A

      巻: 90 ページ: 052516

    • DOI

      10.1103/PhysRevA.90.052516

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Zeeman resonance spectroscopy of 84-87Rb in superfluid helium2014

    • 著者名/発表者名
      X.F. Yang, T. Furukawa, T. Wakui, K. Imamura, T. Fujita, Y. Mitsuya, M. Hayasaka, Y. Ichikawa, Y. Ishibashi, H. Shirai, T. Suzuki, Y. Ebara, A. Hatakeyama, M. Wada, T. Sonoda, Y. Ito, T. Kobayashi, S. Nishimura, M. Kurata-Nishimura, Y. Kondo, K. Yoneda, H.Ueno, T. Shinozuka, T. Shimoda, K. Asahi, Y. Matsuo
    • 雑誌名

      RIKEN Accel. Prog. Rep.

      巻: 47 ページ: 37-37

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Observation of hyperfine resonance of 87Rb in superfluid helium toward laser spectroscopy of atoms with exotic nuclei2014

    • 著者名/発表者名
      K. Imamura, T. Furukawa, T. Wakui, X.F. Yang, Y. Mitsuya, T. Fujita, M. Hayasaka, T. Sagayama, S. Kishi, Y. Ichikawa, H. Shirai, T. Suzuki, Y. Ebara, T. Sato, Y. Otomo, S. Kojima, A. Hatakeyama, T. Kobayashi, H. Odashima, K. Asahi, H. Ueno, Y. Matsuo
    • 雑誌名

      RIKEN Accel. Prog. Rep.

      巻: 47 ページ: 240-240

    • 査読あり
  • [学会発表] The sixth international conference on Trapped Laser spectroscopy of atoms in superfluid helium for the measurement of nuclear spins and electromagnetic moments of radioisotope atoms2014

    • 著者名/発表者名
      T. Fujita, T. Furukawa, K. Imamura, X. F. Yang, A. Hatakeyama, T. Kobayashi, H. Ueno, K. Asahi, T. Shimoda, Y. Matsuo
    • 学会等名
      The sixth international conference on Trapped Charged Particles and Fundamental Physics (TCP2014)
    • 発表場所
      かがわ国際会議場(香川県高松市)
    • 年月日
      2014-12-01 – 2014-12-05
  • [学会発表] Effective production of spin polarization of atoms in superfluid helium using pulsed lasers2014

    • 著者名/発表者名
      M. Hayasaka, T. Furukawa, H. Tomita, T. Takamatsu, K. Imamura, T. Fujita, T. Kobayashi, H. Uematsu, H. Ueno, Y. Matsuo
    • 学会等名
      Fourth Joint Meeting of the Nuclear Physics Divisions of the American Physical Society and the Physical Society of Japan
    • 発表場所
      Hawaii, USA
    • 年月日
      2014-10-07 – 2014-10-11
  • [学会発表] Hyperfine structure measurement of 87Rb atoms injected into superfluid helium as highly energetic ion beam2014

    • 著者名/発表者名
      K. Imamura, T. Furukawa, X.F. Yang, T. Fujita, T. Wakui, Y. Mitsuya, M. Hayasaka, Y. Ichikawa, A. Hatakeyama, T. Kobayashi, H. Odashima, H. Ueno, Y. Matsuo
    • 学会等名
      Fourth Joint Meeting of the Nuclear Physics Divisions of the American Physical Society and the Physical Society of Japan
    • 発表場所
      Hawaii, USA
    • 年月日
      2014-10-07 – 2014-10-11

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公開日: 2016-06-01  

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