研究課題/領域番号 |
24350017
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
江原 正博 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 計算科学研究センター, 教授 (80260149)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / 共鳴状態 / 多電子過程 / 太陽電池光増感 / 電子誘起反応 / 大規模系電子励起状態 |
研究概要 |
本研究課題では、強相関電子状態や電子共鳴状態を精密に取り扱うことのできる基礎理論の開発を行い、複雑な電子状態が本質である化学現象に応用することを目的としている。 今年度は、実施計画で挙げた研究テーマについて下記の研究成果を得た。 (1)強相関電子状態の理論開発では、強相関が重要となる微粒子触媒について検討した。金クラスターにおけるメタノール酸化反応について、高精度クラスター展開法であるCR-CC(2,3)法を用いて、DFT汎関数の評価や摂動法を用いた外挿法の研究を行った。(2)大規模系電子励起状態の理論開発では、励起状態の溶媒効果の理論(PCM-SAC-CI)、その線型応答理論と状態選択の方法の特徴、摂動法に基づいて多状態の溶媒効果を一挙に求める計算法について、理論の定式化、プログラムの実装、応用計算を行った。コロネンπ拡張系への応用、ビフェニルの励起状態の精密な帰属、減衰全反射遠紫外(ATR-FUV)分光法によるアミド拡張系の遠紫外領域の分光と水素結合の効果、紫外線遮蔽分子であるシンナメート誘導体の吸収スペクトルにおける置換基効果などについて研究を行った。(3)電子共鳴状態の理論開発においては、内殻電子過程を中心に研究を進めた。内殻二電子コアホール状態の分光、特に、分極ユニットの効果やN2O分子におけるオージェ過程、さらに、ヨウ素分子によるニュートリノ質量分光の可能性についても研究を行った。(4)量子ドット・太陽電池色素増感の量子過程の研究では、実験と協力し、クマリンをドナーとするD-π-A型の色素増感太陽電池の色素分子の励起スペクトルや分子内電子移動励起の精密な理論解析を行った。(5)電子誘起化学反応の精密解析では、電子移動型励起の化学指標のプログラムの実装、応用計算を行った。また、励起状態の構造論や蛍光エネルギーに関するTD-DFT法の汎関数の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績で記述した通り、当初に研究計画で掲げた5つの研究テーマ全てについて、研究成果が得られており、研究発表も順調に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
強相関系である高分子担持触媒では、金・パラジウム合金クラスターの酸化的付加、ウルマンカップリング反応の全反応メカニズムとエネルギー論、逆ハロゲン依存性について重点的に研究する。また、大規模系電子励起状態理論では、PCM-SAC-CI法を用いた圧力効果の検討や共鳴状態への応用、新しい複素吸収ポテンシャルの導入とCAP/SAC-CI法の大規模共役系π共鳴状態への適用を行う。また光物性化学の研究では、ルテニウム錯体の励起スペクトルとプロトン化した場合の配位構造との相関、シンナメート誘導体のpump-prove分光で観測される励起緩和過程の解明、ナイロンなどの高分子系やチタニア表面におけるATR-FUVスペクトルの解析、三重項励起状態の構造論やリン光エネルギーに対するTD-DFT法の汎関数の評価などについて研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、理論開発とプログラム開発に重点を置いたため、大規模系を取り扱うための計算機を購入しなかった。 昨年度に理論およびプログラム開発についてかなり進展した。しかしながら、平成26年度についてもプログラム開発には力を割く必要がある。状況に応じて、計算機を購入する、または、若手共同研究者の招へいに利用する計画である。
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