研究課題/領域番号 |
24350021
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大森 建 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50282819)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レドックス / 分子内反応 / 酸化 / 還元 / 天然有機化合物 / 光反応 / 熱反応 |
研究実績の概要 |
本研究は、化合物の酸化様式に注目し、新たな効率的分子変換法を見出すことを目的としている。具体的には、分子に内在する各官能基の酸化状態を同一分子内の他の箇所へ移動させることのできる反応(分子内レドックス反応)の開拓を目指した。これにより、外部反応剤を用いることなく、目的とする分子変換を効率的に行うことが可能となる。 これまでに、光照射条件下にて進行する反応(光分子内レドックス反応)を利用し、ナフトキノン系天然物スピロキシンCの全合成に成功しているが、本年度においてはその不斉全合成を達成した。また、さらに酸化段階の高いスピロキシンA及びBの合成にも取り組み、鍵となるクロロ基の導入に関し、幾つかの有用な知見を得た。 さらに、フッ素原子を導入したフェノール誘導体を酸化し、得られたジフルオロジエノン誘導体を用いた新しいタイプの分子内レドックス反応の開発を試みた。その結果、調製した化合物の安定性が予想以上に高く、期待した変換が起こらないことが明らかとなった。しかし、その検討の途上で、エノン部のフルオロ基の置換に関し、興味深い反応性を見出した。そしてその研究を発展させ、抗菌活性を有するナフタレノン系天然物、ペレニポリドAの初の全合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、分子内レドックス反応の開拓に関し、従来にないナフトキノン誘導体を用いた光反応を見出し、それを応用して天然物の合成に成功した。 また、ジオキシノン誘導体から導かれるエノールシリルエーテルの分解反応を行い、通常困難が伴うアレンの合成にも成功した。さらにはフルオロ基を有するフェノールを酸化し得られた化合物の特性を活かした新たな分子変換法を見出すことができた。 このように、研究は従来の目的どおり進捗しており、実際に新たな方法論の開拓に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究事業を通じて行ってきた研究において、最終的な結論、とりまとめを行うために、反応条件や反応剤の組合せ等について、さらに詳細な検討を行う必要が残されているので、この点について集中的な検討を行う。 また、未解決の課題については従来とは異なるアプローチ、例えばこれまで通常行ってきた反応容器を用いたバッチ合成法を、フロー反応装置を用いた合成法に変えて試みるなどの方策を検討する。 それと並行し、これまでに見出された方法論、特にフルオロベンゼン誘導体を用いた反応を活かし、あらたな生理活性天然有機化合物の全合成研究を展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該補助事業期間を通じて行ってきた研究(具体的には有機合成実験)において、最終的な結論を得るために、反応条件や試薬の組み合わせ等について、さらに詳細な検討を行う必要が残された。 また、これまでに得られた成果を基とした新たな展開が見込まれるため、継続してその可能性を模索することが適切と判断した。 これらの理由により、平成26年度に行う予定であった実験の一部を次年度に行うこととしたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
有機合成を中心とした実験を行うため、主に有機反応に用いる試薬・溶媒や硝子器具、そして合成関連の機器等(主として冷却装置や加温装置等)の購入に使用する予定である。
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