研究概要 |
本研究では,1,3-双極子を活用する複素環合成の革新を行うことを目的に,1.協奏的1,3-双極子付加環化の力量化,2.段階的(=非協奏的)付加-環化を基盤とする集積反応系の確立,および3.1,5-双極子(=共役拡張型1,3-双極子)のルネサンス,という新コンセプトに基づき検討した。 1.アリルアルコールとしてプロキラルな1,4-ペンタジエン-3-オールを基質とし,アゾメチンイミンの不斉1,3-双極子付加環化反応による不斉非対称化で複数の不斉炭素の一挙構築を試みた。酒石酸エステルを不斉源として活用する複核キラル反応場の中心金属としてはマグネシウムを選び,付加環化反応を行ったところ,酒石酸エステルを化学量論量用いることにより不斉非対称化が進行し,対応する光学活性ピラゾリジンが高レジオ,ジアステレオ,エナンチオ選択的に得られることを見出した。 2.ニトロンへの亜鉛アセチリドの求核付加反応生成物であるN-(プロパルギル)ヒドロキシルアミンを基盤とする環化反応を試みたところ,銀塩存在下で効率的な環化反応が進行し,対応する4-イソオキサゾリンが高収率で得られた。一方,銅塩存在下で反応を試みたところ,4-イソオキサゾリンを経由する骨格変換が一挙に進行し,2-アシルアジリジンがcis選択的に得られることを見出した。 3.C,N環状N'-アシルアゾメチンイミンとイソシアニドとのUgi型の付加反応を試みたところ,〔5+1〕環化反応が進行し,対応するイミノ-1,3,4-オキサジアジン-6-オンが得られることを見出した。これは,C,N環状N'-アシルアゾメチンイミンが1,5-双極子として機能したことを意味し,1,3-双極子の新たな反応性を見出した反応として極めて画期的である。今後,共役拡張型1,3-双極子が1,5-双極子と機能する反応系の開発を精力的に推進する予定である。
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