研究課題/領域番号 |
24350022
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宇梶 裕 金沢大学, 物質化学系, 教授 (80193853)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 合成化学 / 有機化学 / 1,3-双極子 / 複素環 / 生理活性 / アゾメチンイリド / 付加環化 / 光学活性 |
研究概要 |
本研究では,1,3-双極子を活用する複素環合成の革新を行うことを目的に,検討した。 1.アリルアルコールとしてプロキラルな1,4-ペンタジエン-3-オールを基質とし,アゾメチンイミンの不斉1,3-双極子付加環化反応による不斉非対称化で複数の不斉炭素の一挙構築を試みた。複核キラル反応場の中心金属としてはマグネシウムを選び,付加環化反応を行ったところ,酒石酸エステルを化学量論量ばかりでなく,触媒量のみ用いるだけでも不斉非対称化が進行し,対応する光学活性ピラゾリジンが高レジオ,ジアステレオ,エナンチオ選択的に得られることを見出した。生成物のピラゾリジノン部位の官能基変換も種々検討し,各種の誘導体への変換も実現した。 2.ニトロンへの亜鉛アセチリドの求核付加反応生成物であるN-(プロパルギル)ヒドロキシルアミンを基盤とする分子変換では,銀塩と銅塩の共存在下で環化-骨格変換が一挙に進行し, 2-アシルアジリジンがcis選択的に得られ,さらに不飽和アルケンであるマレイミドを加えて加熱すると,アゾメチンイリドが発生して1,3-双極子付加環化反応が進行し,高度に官能基化された2,5-trans-ピロリジンがワンポットで得られることを見出した。 3.C,N環状N’-アシルアゾメチンイミンとイソシアニドとのUgi型の付加反応を試みたところ,〔5+1〕環化反応が進行することを見出している。2.項において, アジリジンよりN’-アシルアゾメチンイリドが発生することを確認したことから,アジリジンから発生するN’-アシルアゾメチンイリドと芳香族イソシアニドとの分子内捕捉反応を試みたところ,炭素側で捕捉された〔3+1〕環化反応生成物が得られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アリルアルコールとしてプロキラルな1,4-ペンタジエン-3-オールを基質としてアゾメチンイミンの不斉1,3-双極子付加環化反応による非対称化を目的に検討を重ねた結果,酒石酸エステルを化学量論量用いる系の他,触媒量用いる系においても不斉非対称化を実現することができ,平成25年度の目的とする部分を達成することができた。 ニトロンへの亜鉛アセチリドの求核付加反応生成物であるN-(プロパルギル)ヒドロキシルアミンを基盤とする環化反応を試み,4-イソオキサゾリン合成を達成することができ,さらに,熱的開環反応によるC-アシルアゾメチンイリド発生を行い,マレイミドによる捕捉で2-アシルピロリジンの立体選択的合成を実現することができた。ニトロンへの金属アセチリドの付加反応からのcis-2-アシルアジリジンまでののワンポット合成も,収率に改善の余地はあるが,可能であることを確認した。 非環状N’-アシルアゾメチンイミンとイソシアニドの〔5+1〕環化反応を試みようとしたが,残念ながら非環状N’-アシルアゾメチンイミンを単離することができなかったため,反応系内で発生する手法も試みたが,生成物を得ることはできていない。一方,イソシアニドに換え,メチレンカルベンとの反応を試みた。残念ながら,ジエチル亜鉛とジヨードメタンから発生する亜鉛カルベノイド(Simmons-Smith試薬)では付加環化生成物を得ることができなかったが,クロロヨードメタンをメチルリチウムで処理して得られるヨードメチルリチウム種による反応では,付加生成物を得ることができ,さらに塩基で処理することにより〔5+1〕環化体を段階的ではあるが得ることに成功した。さらに今後,他のカルベノイド種での反応も可能であると期待できる。 以上,当初の計画の通り進んだ部分が多く,一部未達成であるが,別途新たな知見を得ていることから,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
アリルアルコールとして2-メチル-2-プロペン-1-オールを基質としてアゾメチンイミンの不斉1,3-双極子付加環化反応により,不斉4級炭素の構築を目指す。得られる予想生成物中の2つの不斉炭素の相対立体化学は,海洋天然有機化合物でありα-アドレナリン受容体阻害などの生理活性を有するManzacidin C中の不斉炭素と同じ関係にある。そこで,生成物を利用するManzacidin Cの全合成にチャレンジする。特に,生成物中で不要であるピラゾリジン環の除去を実現し,是非とも全合成を達成し,本手法の有用性を示したい。 ニトロンへの亜鉛アセチリドの求核付加反応生成物であるN-(プロパルギル)ヒドロキシルアミンを基盤とする環化反応,転位反応によりcis-2-アシルアジリジンが得られ,熱的開環反応によるC-アシルアゾメチンイリド発生することを見いだしている。この C-アシルアゾメチンイリドの求1,3-双極子剤による補足を試みる。例えば,芳香族イソシアニドによる補足では,炭素側で反応した[3+1]付加型複素環が得られることを見いだしたが,さらに種々のイソシアニドを用いてルイス酸の添加の有無および種類,反応温度,溶媒等の反応条件を詳細に検討し,効率的な複素環合成法の確立を目指す。 共役拡張型1,3-双極子が1,5-双極子として機能することに関しては,すでに環状N’-アシルアゾメチンイミンにおいて,イソシアニドとの反応において明らかにすることができた。さらに,N’-アシルアゾメチンイミンの他,α,β-不飽和ニトロンについても検討対象とし,1,5-双極子(=共役拡張型1,3-双極子)機能を発現する化学種拡大を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果発表について,海外での学会参加の一部を今年度から次年度に計画変更したのが,主な理由である。 海外での学会参加により,研究成果を広く公表予定である。
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