研究課題/領域番号 |
24350023
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
忍久保 洋 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50281100)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポルフィリン / ヘテロ原子 / π電子化合物 / 硫黄 / 芳香族性 / 反芳香族性 / クロスカップリング / C-H活性化 |
研究概要 |
DMF中、ジクロロジピリン錯体と硫化ナトリウムを反応させたところ、ニッケル錯体からはチアコロールニッケル錯体、亜鉛錯体からはジチアポルフィリンがそれぞれ生成することを見いだした。チアコロールニッケル錯体は、高い平面性をもち、硫黄上の非共有電子対を含む18π共役系に由来する明確な芳香族性を示す。この結果は、3p軌道の非共有電子対が18πという大きな芳香族π電子系に含まれる例として興味深い。一方。ジチアポルフィリン金属錯体は硫黄を中心に折れ曲がった構造をもつことを明らかにした。特に、ニッケル錯体をトルエン中加熱すると、脱硫反応が進行しチアコロールニッケル錯体となることを見いだした。亜鉛、パラジウムおよび白金の錯体では、全く脱硫反応は進行しなかった。これは、この脱硫反応が金属のイオン半径に依存することを示唆する。そこで、小さなイオン半径をもつアルミニウムをもつジチアポルフィリン錯体を合成したところ、同様に脱硫が収率よく進行した。小さなイオン半径をもつ金属イオンが中心に配位すると、ジチアポルフィリンは大きく折れ曲がる。このため、反応するα炭素同士が接近し、脱硫が進行しやすくなったものと考えられる。さらに、DFT法を用いた理論計算により脱硫反応のメカニズムを解析し、ジチアポルフィリン金属錯体の歪が鍵となっていることを明らかにした。 また、反芳香族性ポルフィリノイドであるノルコロールをmCPBAまたは酸素で酸化すると、芳香族性をもつオキサコロールが生成することも明らかにした。これにより、メゾ位のヘテロ原子が酸素の場合よりも硫黄の場合の方が、ヘテロコロールの芳香族性は強くなることが分かった。さらに、ジチアポルフィリンおよびチアコロールの硫黄の酸化にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度には、ジピリン金属錯体を出発物質とするメゾ位に硫黄原子をもつポルフィリン誘導体の合成を計画していたが、この合成を順調に達成し、得られたジチアポルフィリンの反応性を明らかにすることができた。それに加えて、当初予定していなかったメゾ位に酸素原子をもつポルフィリン誘導体であるオキサコロールの合成を達成することができた。また、含硫黄ポルフィリンの硫黄の酸化についても予備的知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に合成できた含硫黄ポルフィリンの置換基を変えることにより結晶構造を制御し、その固体物性を明らかにする。また、予備的知見が得られた含硫黄ポルフィリンの酸化について詳細に検討し、その構造や基本物性ならびに金属錯化挙動を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
原料であるジピリン金属錯体の合成法が改良できたため、消耗品が節約できたため残額が生じた。当該経費は次年度経費とともに含硫黄ポルフィリンの合成実験に使用し、その固体物性を明らかにする。
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