研究課題/領域番号 |
24350023
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
忍久保 洋 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50281100)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポルフィリン / ノルコロール / シリレン / ヘテロ原子 / 保護基 / 近赤外色素 / パイ共役 / エチニル基 |
研究概要 |
環縮小ポルフィリンの一種であるノルコロールは、ひずみのため従来合成困難と考えられてきた。しかし、我々はジピリンニッケル錯体の還元的環化を試みたところ、ノルコロールニッケル錯体が90%以上という高収率で生成し、安定な化合物として大量に合成できることを見いだした。さらに、ノルコロールが明確な反芳香族性をもつこと初めて実証した。今回、この反芳香族性ノルコロールに対して二価化学種であるシリレンを反応させることを試みた。高い反応性をもつ反芳香族性π電子系へのケイ素の挿入により興味深い物性をもつ新規π電子系が得られるのではないかと考えたからである。嵩高い置換基によって安定化されたシリレンをノルコロールニッケル錯体と反応させたところ、室温という穏和な条件で瞬時に反応することが分かった。分析の結果、高い位置選択性でケイ素の挿入反応が進行し、パイ共役系上にケイ素を含む新規ポルフィリノイドが生成した。興味深いことにこのポルフィリノイドはケイ素の効果により近赤外領域に強い吸収をもつことがわかった。 一方、メゾ位にシリルエチニル基をもつポルフィリンに界面活性剤の存在下酸を作用させると、アルキニル基が除去され置換基を持たないポルフィリンが生成することを発見した。シリルエチニル基がポルフィリンの保護基として利用できる可能性を示す結果である。実際、この方法を用いて従来の方法で合成困難であった非対称型ポルフィリンを効率的に合成することに成功した。高いエネルギー変換効率をもつ色素増感太陽電池の色素の創成に利用できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シリレンと反芳香族化合物の反応によりケイ素の挿入反応が起こることを世界ではじめて発見し、新たな含ケイ素パイ電子化合物の創成に実際につながることを示した。さらに、新規含ケイ素ポルフィリンが強い近赤外吸収をもつことを見いだした。一方、ポルフィリン上のエチニル基が簡単に除去できることを見いだし、太陽電池の増感剤の合成などに利用できる可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
反芳香族性ポルフィリンとヘテロ原子活性種との反応によりさらに多様なヘテロ原子をもつポルフィリンを合成する。また、シリルエチニル基をポルフィリンの保護基として利用して新規非対称型ポルフィリンを合成し、実際に色素増感太陽電池を作成して性能の評価を行い、高い発電性能をもつ色素の合成に挑戦する。
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次年度の研究費の使用計画 |
サンプル合成の効率が向上したため、使用する試薬が若干するなくて済んだため。 試薬など消耗品に使用する。
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