研究課題/領域番号 |
24350024
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 理尚 京都大学, 化学研究所, 助教 (30447932)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 構造有機化学 / 芳香族性 / n型材料 / 有機薄膜太陽電池 / 有機半導体材料 / フラーレン |
研究概要 |
優れた電子受容性をもつπ共役化合物の開発は有機エレクトロニクス分野の発展において重要であるが,その分子設計の指針はπ共役骨格への電子求引基やヘテロ原子の導入が主流となっている。これに対して,フラーレンは5員環/6員環の縮合により高い電子受容性をもち,この特長を活かした材料として利用されている。H24年度は,フラーレンがもつ高い電子受容性の鍵骨格として,反芳香族性をもつことが知られるピラシレンに着目し,そのπ共役系をベンゾ縮環により拡張したテトラベンゾピラシレン(TBP)誘導体を効率的に合成し,その構造および基礎特性を明らかにした。H25年度は,このTBP誘導体を有機薄膜太陽電池のアクセプター材料に応用すべく,長鎖アルキル基をもつ誘導体を合成し,ポリ(3-ヘキシルチオフェン)をドナー材料として組み合わせた光電変換素子を作製したが,良好な変換特性は得られなかった。素子作成条件および置換基の最適化が十分でないため,TBP骨格に対する位置選択的な置換基導入法を開発し,溶解性の向上と置換基の最適化を図ることで,高い特性を示す材料探索を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,電子受容性分子であるフラーレンの鍵骨格を抽出し,そのπ共役を拡張することにより新しい電子受容性物質群を創製しようとするものである.H24年度は,反芳香族性をもつことが知られるピラシレンに着目し,そのベンゾ縮環型分子を高収率で合成する手法を確立した.H25年度は,本手法を発展させることにより,ねじれたπ平面をもつ分子,およびヘテロ芳香環縮環体の合成に関して,生成物の構造や基礎特性の解明を進めた。一方,有機薄膜太陽電池のn型材料を開発するには,HOMOとLUMO準位の精密制御に加え,置換基の最適化によるモルフォロジー制御も重要であるため,優れた特性を示す材料の探索に関して目的の達成がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は,前年度までの研究を引き続き推進し,種々のヘテロ芳香環の縮環した一連の電子受容性化合物群を創製する。また,置換基導入による電子状態の精密制御と固体中でのモルフォロジー制御により,有機薄膜太陽電池における優れたn型材料を開発する。さらに,リチウムイオン電池におけるカソード電極材料としての特性を評価し,優れた充放電特性とサイクル特性を示すπ電子化合物の独自の設計指針を確立したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の研究においては,小スケールでの合成実験および有機薄膜太陽電池の特性評価をおこなった。デバイス特性およびリチウムイオン電池における特性評価を本格的に実施するためには,スケールアップした合成実験が不可欠となる。薬品などの物品費に多額の経費が見込まれる状況であったため,次年度使用額が生じた。 H26年度は,有機太陽電池およびリチウムイオン電池の電極材料としての評価を実施するため,主として,資料を大量合成するための物品費として使用する計画である。
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