研究課題/領域番号 |
24350026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 哲孝 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50181904)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ポリオキソメタレート / 分子触媒 / ナノ構造体 / 酸化反応 / 新反応開発 |
研究概要 |
本研究では、ポリオキソメタレートを基盤とした高機能触媒の開発を行った。本年度は、以下の2つの高効率触媒反応系の開発に成功した。 まず、様々なポリオキソメタレートとヒドロシランを活性化可能な金属錯体を組み合わせて反応を検討したところ、単核タングステートと酢酸ロジウムを触媒としたときにヒドロシランをシリル化剤としたインドール誘導体のN-シリル化反応が効率的に進行することを見出した。単核タングステートと酢酸ロジウムを触媒としたジメチルフェニルシランによるインドールのN-シリル化反応では対応するN-シリルインドールが99%以上の収率で得られた。インドール以外にも、種々のインドール誘導体やピロールやカルバゾールを用いて反応を行ったところ、対応するN-シリル化合物が高収率で得られた。また、本触媒系はケトンやアルデヒド、二酸化炭素、アルケン、ニトリルといった様々な基質のヒドロシリル化反応にも適用でき、対応するヒドロシリル化生成物を高収率で与えた。 一欠損ポリオキソメタレートが種々の第一級アミドの脱水反応に対する優れた個体触媒となることを見出した。欠損がないポリオキソメタレートを触媒として用いたところ、反応はまったく進行しなかったことから、欠損型ポリオキソメタレートの欠損部位が本反応の活性点となっている可能性が示唆された。反応途中で一欠損ポリオキソメタレートをろ過により取り除いた後にろ液をさらに加熱撹拌した。その結果、さらなるニトリルの生成は確認されなかった。加えて、反応終了後の溶液のICP-AES分析からタングステンの溶出量は0.02%以下であることが明らかとなった。以上の結果から、本触媒は不均一系触媒として機能していることが明らかとなった。また、回収した触媒は活性を維持したまま少なくとも3回の再使用が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)種々の種類の基質に適用可能な汎用的なシリル化、ヒドロシリル化反応系を開発できた点、(2)ポリオキソメタレートを基盤としたアミド脱水素反応の固体触媒反応系を開発できた点、から当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H24・25年度に得られた知見を参考にしながら、開発した反応メカニズムを検討し、種々のキャラクタゼーションを行い、反応活性点の詳細な情報を得る。その知見をベースにして、更なる高機能触媒の設計指針を得る。各反応のスケールアップ、流通系による反応の効率化を図り、実用プロセスへの応用展開の可能性を探る。新反応開発に関しても引き続き継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究室の移転のため、実験が一時的に止まった。そのため、次年度使用額が生じた。 物品費として試薬等を購入する予定である。
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