研究課題/領域番号 |
24350027
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小坂田 耕太郎 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (00152455)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パラジウム / 多核錯体 / 転位反応 / シリル錯体 / ゲルミル錯体 / プロトン化 / 白金錯体 |
研究概要 |
平面型四核パラジウム錯体の中で架橋ゲルマニウム配位子を有する錯体について、前年度の成果に基づいてルイス酸との反応生成物を精査した。ルイス酸性の高いハロゲン化亜鉛は反応しなかったものの、昨年検討を行ったヨウ化銅に加えてヨウ化銀も類似の付加反応をおこし、パラジウム4、銀1の組成をもつ混合金属錯体を生成することを見出した。この錯体はNMRスペクトルの測定によって、そのタイムスケールに相当する運動を行うこと、ヨウ化銅の付加体よりも平面上の11族金属の旋回運動が速くおきていることがわかった。 四核パラジウム-ゲルミレン平面錯体とブレンステッド酸である安息香酸、テトラフルオロホウ酸との反応を再検討し、プロトン化による鎖状平面四核錯体を得た。以前に得たクレゾールの付加体と同じカチオン四核構造を有する一方で、アニオンの位置が異なる結晶を得た。単結晶X線解析を行ったところ、鎖状四核錯体の構造が確定し、昨年までの一義性のない構造解析結果と異なり、信頼できる構造を得ることができた。 三核平面白金-ゲルミレン錯体とブレンステッド酸との反応を行い、三核構造の上または下にプロトンがキャップして配位したカチオン性錯体を得ることができた。この錯体はカルボニル配位子を用いて以前に合成されていたが、極めて熱的に不安定であり、その構造が不明であった錯体である。今回ゲルミレン配位子を用いることによってプロトン化体を安定に単離することができた。さらに、プロトンが平面三核の上と下の位置で入れ替わる分子内反応が起きていることをNMRスペクトルの解析等で明らかにした。 これら三核および四核パラジウム錯体と酸との新しい反応とその生成物を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
四核錯体のプロトン化による鎖状錯体の分子構造を決定したことは本研究の骨子に関わる重要な成果であるとともに、酸による金属原子団の転位反応を解明した世界で初めての例となる。白金三核錯体のプロトン化反応も、30年来の疑問に対する解答を与えたもので、学術上の意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
25年度に明らかにした四核鎖状錯体の分子構造に基づいて、逆反応である鎖状錯体から環状錯体への脱プロトン反応を検討する。あわせて反応の熱力学、動力学パラメーターを測定し、本転位反応の機構について明らかにする。
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