研究課題/領域番号 |
24350029
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
酒井 健 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30235105)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光分子デバイス / 水素エネルギー / 人工光合成 / 多電子貯蔵 / 錯体触媒 |
研究概要 |
我々は、これまでにRuPt二核錯体や[Pt(terpyridine)Cl]+及びその誘導体が単一分子光水素生成デバイスとして活性を示すことを見出している、本年度はまず、より高活性な光水素生成触媒の開発を目的としてメチルビオローゲン多量体を導入したPtCl2(bpy)誘導体を合成し、その機能評価を行った。犠牲還元試薬EDTA、及び0.1 M NaClを含む0.1 M酢酸緩衝溶液中 (pH = 5.0) において錯体触媒存在下において可視光照射を行ったところ、これまでよりも高い触媒回転数(14~27)で水素生成が確認された。更に、光水素生成速度のEDTA濃度依存性を測定したところ、ミカエリス-メンテンの式に従う挙動が観測された。この結果から、本錯体はEDTAと会合体を形成し、光水素生成反応を進行させることが明らかとなった。更に、これらの錯体が真に分子性触媒として作用しているか否かを判断するため、動的光散乱法(DLS)について検討した。本錯体に関して5時間の光水素生成反応中において自己相関関数の上昇は全く見られず、散乱強度の増加も観測されなかった。この結果は、白金コロイド等の粒子形成は光反応中に起こっておらず、今回活性を評価した錯体が分子性触媒として機能していることを示している。一方、RuPt二核錯体の光水素生成触媒機能については、ピコ秒領域の発光減衰曲線と過渡吸収スペクトルの測定から、分子内電子移動の時定数を決定すると同時に分子内電子移動消光(酸化的消光)が RuPt2+とイオン対を形成した EDTA二価アニオンからの電子移動消光(還元的消光)と競合して起こることを明らかにした。さらに興味深いことに、この研究では、ピコ秒時間領域に生じる過渡種の一部が少なくともナノ秒時間領域まで延命する長寿命種であり、その長寿命種が実質的に水素生成触媒過程に関与する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度に得られた、単一分子光水素生成触媒作用を示す、ビオローゲンを導入した白金錯体触媒が高い触媒活性を示すという成果については、当初の計画では想定していなかった内容であり大幅な進展が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より高活性な単一分子光水素発生デバイスの開発を目指し、以前のものと比較し可視光捕集能力を高めた白金錯体触媒について、その合成を検討し触媒特性の評価を行っていきたいと考えている。また、酸素発生触媒機能と光増感作用を併せ持つ単一分子光酸素発生デバイスの合成と機能評価も進める。
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