研究課題
基盤研究(B)
本研究では、優れた物性を持つ高分子材料の合成を目指して、希土類錯体の特異な性質を利用した高活性、高選択的な重合触媒系の構築を行っている。本年度は、様々なフルオレニル配位子を持つハーフサンドイッチ型スカンジウムジアルキル錯体を合成するとともに、これらを用いて、スチレンの重合及びスチレンとエチレンの共重合について詳細に検討した。その結果、ジアルキル錯体と[Ph3C][B(C6F5)4]の反応によって生成するカチオン性スカンジウムアルキル触媒は、以前に我々が開発した(C5Me4SiMe3)Sc(CH2SiMe3)2(THF)から生成するカチオン性スカンジウムアルキル触媒と比較して、触媒活性は低かったものの、スチレンのシンジオ選択性はほぼ同等の高い選択性を示した。さらにジアルキル錯体と[Ph3C][B(C6F5)4]からなる触媒系に15等量のトリイソブチルアルミ(AiiBu3)を添加した三元系触媒では、高い立体選択性を保持したまま触媒活性が劇的に向上することが明らかになった。このAliBu3の効果を明らかにするためにDFT計算により触媒活性化の機構を検討した結果、まずAliBu3が錯体に配位したTHFを引きはがし、続いて[Ph3C][B(C6F5)4]との反応により金属周りの立体障害が少ないTHFフリーのカチオン性アルキル活性種が生成していることが示唆されている。このような三元系触媒は広く研究がおこなわれているが、DFT計算によりトリイソブチルアルミの効果や活性化の過程を調査した例は限られており、今後、精密オレフィン重合触媒の開発において重要な知見を与えると期待される。
2: おおむね順調に進展している
フルオレニル配位子を有するハーフサンドイッチ型スカンジウム触媒を用いたスチレンとエチレンの共重合において、アルキルアルミニウムの添加により触媒活性が大きく向上することが見出され、おおむね順調に進展している。
引き続き希土類重合触媒を開発するとともに、2種類の重合触媒を組み合わせてアルキルアルミニウムやアルキル亜鉛をチェーンシャトリング試剤として用いることにより、新しいオレフィン類の立体選択的共重合反応の開発に向けて研究を進める予定である。
昨年11月頃、来年度からこの研究に参画する博士研究員が新たに配属されることが決まり、一部の基金を来年度のために残している。今年度の基金を合わせると、来年度の研究費は550万程度になり、これらを実験器具や試薬の購入および学会発表のために使用する計画である。H24年度基金分未使用額(H25年1月末時点)2,100,000円
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Organometallics
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