研究課題/領域番号 |
24350031
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松尾 司 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90312800)
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研究分担者 |
橋爪 大輔 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, その他 (00293126)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 典型元素 / 不飽和結合 / ホウ素 / 水素化ホウ素化合物 / ジボラン / 小分子活性化 |
研究概要 |
本研究では、新規な典型元素不飽和結合化学種を合成し、小分子の活性化などの反応性の開拓を通して、典型元素化合物に関する先駆的な研究を格段に発展させることを目的とする。独自に開発した嵩高い「縮環型立体保護基(Rind基)」を導入することにより、ホウ素やケイ素を含む新しい不飽和結合化学種を合成し、それらの分子構造や化学結合について解明するとともに、結合電子に由来する特異な反応性を探究することを目的とする。 平成25年度では、平成24年度に引き続き、嵩高いEind基が置換した水素化ホウ素化合物について研究を進めるとともに、新たに異なる立体保護効果が期待される嵩高いMPind基が置換した水素化ホウ素化合物の研究に着手した。Eind基が置換した「ジボラン(6)」は、分子構造をX線結晶構造解析により決定し、三中心二電子結合による二量体の形成について明らかにした。また、ジボラン(6)の重水素化体を合成して熱反応性を調査したところ、Eind基のエチル基のC-H結合とB-D結合とのシグマボンドメタセシスが進行することがわかった。ジボラン(6)の重水素化体と水素ガスとの反応においても、シグマボンドメタセシスによるH/D交換反応が進行した。これらの知見により、ジボラン(6)は溶液中において単量体(モノボラン)としての反応性を示すことが明らかとなった。ジボラン(6)と種々のルイス塩基との反応性について調査し、NHCとの反応では「モノボラン・NHC錯体」が安定に生成することがわかった。さらに、MPind基を有する「ジボラン(6)」、「ジボラン(6)ジアニオン」、「ジボラン(4)」の合成について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素化ホウ素化合物に関する研究を中心におおむね順調に進展している。研究代表者が空気や湿気に対して極めて不安定なホウ素化学種を合成・単離し、研究分担者がX線結晶構造解析によって特異な分子構造を決定している。小分子の活性化を指向した反応性に関する研究についても新しい知見がみつかっており、今後の進展が十分に期待出来る状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、水素化ホウ素化合物と小分子との反応性についてさらに研究を推進する計画である。水素分子に加えて、一酸化炭素や窒素分子などの不活性小分子の活性化にもチャレンジし、水素化ホウ素化合物の可能性を広げていきたい。また、新たにホウ素の不安定化学種である「ボリレン」や「ジボレン」の合成と分光学的観測にも挑戦する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、実験補助者(パートタイマー)の人件費を計上していたが、適任者がみつからず、未使用額が発生した。 平成26年度はパートタイマーの適任者を探すとともに、一部の研究は学生と一緒に進める予定である。他に、試薬や溶媒、ガラス器具などの消耗品、研究打ち合わせや学会発表などの国内旅費、その他、印刷代などに使用する計画である。
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