研究課題/領域番号 |
24350032
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 愛弓 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (80339241)
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研究分担者 |
庭野 道夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (20134075)
木村 康男 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (40312673)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオセンサ / 神経伝達物質 / シナプス / イオンチャネル |
研究概要 |
マウス脳スライス標本中において,電気刺激によって放出されるグルタミン酸を,キャピラリー型酵素センサーを用いて評価した.その結果,電気刺激によって脳スライス中に興奮性後シナプス電位(EPSP)が誘起されるが,このEPSPと電気刺激とが,グルタミン酸センサーの電流値に大きな影響を及ぼすことが判明した.その理由として,EPSPの測定回路と,グルタミン酸センシングのための電気化学測定の回路とが,電気伝導性の脳スライスを介してつながってしまうことに由来することを,デバイスシミュレーションを用いて明らかにした.さらに,EPSPおよび電気刺激由来のノイズ成分を除去した真のグルタミン酸信号成分を抽出するための解析手法を創案するとともに,得られたグルタミン酸信号の信頼性について様々な刺激プロトコルを用いて検証した(論文投稿中).さらに,この手法を,シナプス可塑性の代表例である長期増強現象に適用し,長期増強の誘導前後におけるグルタミン酸放出量について評価した.また,脳内計測が可能なプローブ型の脂質二分子膜グルタミン酸センサーの構築を目指し,そのための課題となっている安定化脂質二分子膜へのイオンチャネルの包埋について検討を行った.チャネルタンパク質はプロテオリポソームに埋め込まれた状態で抽出されてくるので,チャネルの包埋のためにはチャネル含有プロテオリポソームを人工脂質二分子膜と効率よく融合(ベシクル融合)させる必要がある.安定化脂質二分子膜として,シリコン基板中に作製した微細孔中に形成した脂質二分子膜を典型例として用い,種々の物理的なベシクル融合促進因子について検討し,膜融合促進因子についての基礎知見を集積した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長期増強誘導前後におけるグルタミン酸放出量の定量については,二種の電気化学的測定法の融合に伴う相互干渉という予期せぬ事態に遭遇したが,その理由を明らかにするとともに新しいサイエンスを展開し,新しい測定法の創案に成功した.また,イオンチャネル型のセンサーについても,その最大の課題であった,イオンチャネルタンパク質の脂質二分子膜への高効率包埋についての糸口を見出しており,総合的にみて,おおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
シナプス可塑性発現時におけるグルタミン酸放出量の評価については,本年度創案した手法に基づいて,引き続き定量を行うとともに,種々の阻害剤を利用したコントロール実験を行い,放出源の確認も行う.また,イオンチャネルタンパク質の脂質二分子膜への効率的包埋については,今年度見い出した知見に基づいて検討を行い,新たなチャネルタンパク質組み込み法としての確立を目指す.ナノセンサーの開発と培養細胞系への展開についても引き続き検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
科研費の適切な使用を心がけて節約に努めたところ、基金分に余剰が生じたために、翌年度への繰り越しとした。 来年度の26年度は本科研費の最終年度となり、測定回数も大幅に増えると予想されるため、実験動物や、実験用ガス、金線、試薬等にかかる消耗品費の増大が考えられる。前年度からの繰り越し金は、その消耗品費として使用したいと考えている。
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